バベシア症

概略

バベシア症は,バベシア種(原虫)による感染症である。バベシア症は無症候性,または発熱および溶血性貧血を伴うマラリア様症状を発現しうる。無脾症患者,高齢者,およびAIDS患者において最も重度である。診断は末梢血塗抹標本中のバベシアの同定,血清学的検査,またはPCR法による。

病因と病態生理

米国では,Babesia microti がバベシア症の最も一般的な原因である。齧歯類が主要な自然保有者であり,通常はマダニ科のシカダニが媒介生物である。ダニ幼虫は感染齧歯類を吸血して感染し,変態して若虫となり,原虫を他の動物や人に伝染させる。ダニ成虫は通常はシカを吸血するが,原虫を人に伝染させることもある。バベシアは赤血球に侵入して成熟し,次に無性的に分裂する。感染赤血球はやがて破裂して原虫を放出し,それが他の赤血球に侵入する。

米国の流行地域はマサチューセッツ州ナンタケット海峡に接する諸島と本土,ニューヨーク州のロングアイランド東部とシェルターアイランド,コネチカット州沿岸,およびニュージャージー州で,ウィスコンシン州,ジョージア州,カリフォルニア州にも発生地がある。ヨーロッパ地域においては,別の種類のダニにより伝播される他のバベシア種が人に感染する。バベシア症は輸血を介しても伝播しうる。

症状,徴候,診断

無症候性の感染が数カ月から数年持続し,それ以外では健康な人(特に40歳未満の人)においては疾患経過の最後まで不顕性のままのことがある。症候性の場合は,通常1〜2週間の潜伏期間を経て発症し,倦怠,疲労,悪寒,発熱,頭痛,筋肉痛,関節痛が数週間続くことがある。黄疸を伴う肝脾腫大,軽度から中等度の溶血性貧血,軽度の好中球減少,血小板減少が起こりうる。感染はときに致死的である(特に高齢者,無脾症患者,およびAIDS患者において)。こうした患者では,バベシア症は熱帯熱マラリアに類似し,高熱,溶血性貧血,ヘモグロビン尿症,黄疸,腎不全を伴う。脾摘出により,以前に感染した無症候性の原虫血症が症候性となりうる。ほとんどの患者はダニによる刺咬の覚えがない。通常,血液塗抹標本中のバベシアの検出により診断を行う。4つに分裂した虫体は(あまりみられないが),有用な診断の手がかりである。血清学的検査およびPCR法が利用できる。

治療と予防

無症候性の患者は治療を必要としないが,持続的な高熱,原虫血症の急激な増加,ヘマトクリットの低下を伴う場合は治療が適応となる。治療(必要な場合)は,アジスロマイシン+アトバコンを併用,またはキニン+クリンダマイシンを併用する。

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