角膜ヘルペス
症状
違和感、流涙、結膜充血、眼瞼浮腫。
炎症の程度、部位により、視力低下も訴える。
所見
上皮型の場合、角膜上皮に特徴的な樹枝状潰瘍を生じる。
実質に炎症が波及すると、角膜混濁、前房内炎症を認める。
診断
特徴的な臨床所見から診断する。 樹枝状混濁は、早期には出現しないので注意が必要。
角膜擦過物、前房水のPCR
治療法
ゾビラックス(200mg)を1日5錠内服。
バルトレックス(500mg)を1日2錠内服。
重症例にはゾビラックス(250mg)を1日3回点滴。
局所投与としてゾビラックス眼軟膏が主に用いられる。
病状に応じてステロイド剤の点眼薬を併用する。
角膜専門家の処方例
(角膜ヘルペス発作時の治療)
ゾビラックスを1日5錠(分5)内服すると、アシクロビルの1日投与量は1000mg。
ゾビラックス内服の血中内移行率は30-40%程度であり、重症例に対しては点滴(250mgを1日3回)を行う。
ゾビラックスに比べると、バルトレックスは吸収率が60%と良く、バルトレックス1日2錠(1000mg)内服する事で点滴に近い効果を得ることができる。角膜ヘルペスではバルトレックスを2週間投与しているあいだにほぼ所見が落ち着く。
保険適応に関しては、角膜ヘルペスの病名で良いが、投与期間が長引く場合は「難治例」との注記が必要である。保険適応に関しては地域差が大きく、医療者は注意が必要。
(角膜ヘルペス緩寛期の治療)
①角膜炎治癒後の寛解期にゾビラックス眼軟膏を一日一回眠前に点入(小豆粒大くらいの少量) しておくと、再発しにくくなる。
②発作時にリンデロン点眼を長く行うと再発しやすい。
③バルトレックスの内服は、1日投与量を2錠から1錠に減らしてから中止する。所見が良ければ、2錠から突然やめても問題ない。
④白内障手術を行う場合には、手術による炎症が再発の引き金になることがあるので、バルトレックス一日2錠の内服を術日あるいは術前日から1週間行い、ゾビラックス眼軟膏を一日2回使用しておけば、発作の生じる可能性は少ない。バルトレックスが治療と予防に有用であることについては、Pubmedでvalacyclovir & keratitisで検索すると良い。
(ゾビラックス軟膏の使い方)
ゾビラックス眼軟膏1日1回の使用では、角膜上皮障害は生じない。逆に1日5回を一週間続けると高頻度に点状表層角膜症を生じる。この場合には、ヘルペス所見が軽減するほどに回数を減らすことで対処する。一回の点入量が少量(小豆粒くらい)で十分であることを指導する。塗りすぎている患者さんは、眼瞼が赤くなるなど眼瞼炎も生じている。
後記
角膜ヘルペスに対して、ゾビラックス眼軟膏は1日5回、必ず2週間使用するように、と記載されている教科書が多いが、上記のような投与法を実践されている最先端の専門家の処方例は非常に貴重である。