手根管症候群
手根管内で、正中神経が何らかの原因によって圧迫障害されて生じる絞扼性神経障害。絞扼性ニューロパチーの中で最も頻度が高い。中年女性に多い。手関節を反復して動かす職業(マッサージ、コンピュータープログラマー、入力作業、研磨労働など)で起こりやすい。
原因は様々で、①手根管内の内容増加:ホルモンの影響(更年期、妊娠、出産)、手の過剰使用、関節リウマチ、甲状腺機能低下症、先端肥大症、腫瘤性病変(ガングリオンなど)、アミロイド沈着(アミロイドーシス、長期の血液透析)、②手根管の狭窄:変形性手関節症、骨折、脱臼、先天的な手根管狭窄、③正中神経の脆弱性:糖尿病などがあげられる。
症状は、一側または両側性に母指~環指橈側の手掌部にピリピリする疼痛、しびれが出現する。夜間に著しく、しばしば覚醒するのが特徴。母指~環指橈側の手掌部のしびれ・感覚鈍麻があり、長期経過例では母指球筋(特に短母指外転筋)の筋力低下・萎縮がみられる。
検査は、末梢神経伝導検査で手首から遠位部の伝導速度の著名な遅延、M波の振幅低下を証明する。また、MRIで正中神経腫大がみられる。
診断は、感覚障害の分布、夜間のしびれ感・痛み、電気生理学的所見(インチング法:神経の走行に沿って1cmごとに刺激し、障害部位を特定する検査)が診断のポイントとなる。
治療は、軽症例では副子固定による局所安静、ステロイド局所注射を行う。改善がみられないもの、重症例では掌側手根靭帯の縦切あるいは内視鏡的に正中神経の除圧を図る。