糖尿病網膜症
症状(飛蚊症、視力低下など)はなく、自覚症状が出現した時点でかなり網膜症が進行していることが多く危険である。硝子体出血、牽引生網膜剥離、虹彩血管新生(ルベオーシス)などにより、失明することもある。近年の日本人の失明原因としては緑内障に次ぎ二位になっている。
診断には眼底検査、蛍光造影検査で行い、Davis分類に基づき、単純糖尿病網膜症、増殖前糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症に分類する。
① 単純糖尿病網膜症
血管の透過性が亢進している状態である。眼底所見では、毛細血管瘤や硬性白斑が見られ、点上・斑状出血が散在しているのが特徴である。また、蛍光造影検査では、出血部位は黒くなっており、細動脈瘤に造影剤がたまってしろくなっている像が見られる。一部の毛細血管よりぞうえいざいが漏出していることもある。治療としては原疾患である糖尿病の改善のため血糖コントロールを行う。この際、急激な血糖コントロールは逆に危険なのでHbA1<7に保つようにする。
(※硬性白斑→網膜浮腫や出血が長期にわたり持続することによって、フィブリンや脂質といった血漿成分が網膜内に沈着した境界明瞭なもののこと。)
② 増殖前糖尿病網膜症
血管が閉塞し、もうまくが虚血状態に陥っていることである。これにより、新生血管が生じるが、新生血管はまだ網膜内にとどまっている状態である。眼底初見としては、単純糖尿病網膜症よりも点状・斑状出血がおおく、軟性白斑が出現しているのが特徴である。蛍光造影検査では血流がなく、周囲よりも暗くなっている無灌流領域が見られる。治療としては、レーザー光凝固により、網膜の血液循環を改善させ、網膜症の進行を遅らせるのが有効である。なお、増殖前期以降は、眼底出血を誘発する恐れがあるので強化インスリン療法による急激な血糖コントロールを行ってはいけない。
(※軟性白斑→細動脈や毛細血管の閉塞により網膜の虚血が起こり、境界不明瞭な白斑が生じること。綿花様白斑ともいう。)
③増殖糖尿病網膜症
血管新生促進因子(VEGF)により、網膜上に血管新生がみられる状態である。眼底初見としては出血、白斑の他に血管の口径不同や白線化が見られ、視神経乳頭上に血管新生が硝子体側に向けて生じている。その結果、硝子体出血や牽引性網膜剥離が見られることもある。蛍光造影検査では、無灌流領域が広範囲にあり、視神経乳頭上の新生血管から造影剤が漏出している像が見られる。治療としては増殖前糖尿病網膜症と同様である。また、硝子体出血や牽引性網膜剥離には、硝子体切除術を行う。