重症筋無力症

神経筋接合部において、アセチルコリン受容体に対する自己抗体が存在するために神経筋伝達障害が見られる自己免疫疾患である。筋肉の易疲労性や脱力をきたす。有病率は10万人あたり5.1人であり、小児、20〜40歳代の女性、50〜60歳代の男性に好発である。
重症筋無力症では、顔面筋、眼瞼挙筋、外眼筋、四肢近位筋などの筋力低下、および易疲労感をきたす。眼瞼下垂、複視が初発症状となることが多い。症状は運動により増悪、休息により改善し、朝よりも夕方に出現しやすいという日内変動があることが特徴である。症状が眼筋にとどまる眼筋型と、眼症状だけでなく、筋力低下が全身の筋に及ぶ全身型がある。
また、重症筋無力症の約15%(特に中高年男性)に胸腺腫が合併し、約65%に胸腺過形成などの胸腺の異常が見られる。逆に、胸腺腫の約30%に重症筋無力症が合併する。よって、検査として胸部X腺、CTで胸腺腫の有無を確認することが重要である。
他の検査として、テンシロン検査がある。長短時間作用型抗ChE薬であるテンシロン(塩化エドロホニウム)の静注により、一過性に筋力が回復すると陽性となり、重症筋無力症が疑われる。テンシロンの効果は長短時間にとどまるため、治療には用いられない。また、誘発筋電図では随意収縮または
反復刺激(低頻度〜高頻度)により、wanning現象が見られる。さらに、血液検査では約80%で抗アセチルコリン受容体抗体が陽性となる。特異度は、ほぼ100%であり、偽陽性はほぼない。また、抗アセチルコリン受容体抗体陰性例では、筋のシナプス後膜上の筋特異的チロシンキナーゼなどに対する自己抗体が陽性になる。
治療としては、まず胸腺腫の合併例では胸腺摘出術を行う。全身型の場合は胸腺腫がなくとも、施行することが多い。胸腺合併のない眼筋型、全身のうち悪性胸腺腫で播種がある場合、小児(免疫が確立していないため胸腺が必要)では、摘出は行わない。内科的治療としては、根治療法であるステロイドが中心となる。胸腺摘出術の術前や術後に投与することもある。ステロイド無効例や副作用により、治療継続困難な時は免疫抑制剤を使う。胸腺腫のない眼筋型の場合は抗ChE薬によって様子を見ることもある。
また、重症筋無力症では、感染・過労・禁忌薬の投与・手術ストレス・妊娠などの誘因により、急激な筋力低下や呼吸困難などの急性憎悪をする場合があり、これをクリーゼという。クリーゼに陥った場合、直ちに気管内挿管、人工呼吸管理を行いないながら原因を探り、原因を除去するため血液浄化療法や抗ChE薬の投与中止などを行う。

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