トゥレット症候群

多様性の運動チックと1つ以上の音声チックが長期間続くチック障害である。

発症頻度は少なくとも10,000名に5名とされ、男女比は3:1と男性に多い。発症の平均年齢は7歳前後とされ、ほとんどの例が14歳までに発症する。
発症時の症状で最も多いものは、まばたきなどの目の運動チックであり、次が頭や顔の運動チックである。音声チックで発症する例はより少ない。
運動チックは、頭部から始まってやがて手、さらに足へと広がっていく。音声チックの出現は通常は運動チックよりも遅く、平均年齢は11歳であり、咳払いや鼻ならしのような単純音声チックである。
コプロラリア出現の平均年齢は13~14歳である。自然経過として寛解と増悪を繰り返すのが特徴である。また、 チックの解剖学的部位、数、頻度、複雑性、重症度が時と共に変動する。寛解の時期は数週間~数年とされている。
合併する障害には、多動症候群と強迫性障害がある。
多動症候群は、約30~70%に合併する。多動症候群の治療には中枢刺激薬がしばしば用いられるが、その使用によってトゥレット症候群の発症が促進されたり増悪することがあると言われている。
強迫性障害、または強迫症状・ 傾向は、約30~80%に合併する。この他にも、不安・抑うつ気分、衝動性、自傷行為などが認められるこ とが多く、それに伴って不適応を生じやすいとされている。また、自閉症との合併もかなり高率であることがわかってきている。
 トゥレット症候群の家族では、トゥレット症候群及びチック障害の出現頻度が高く、遺伝的要因の関与が大きいとされている。
遺伝形式としては、浸透率の低い常染色体優性遺伝が想定されている一方、環境因(生物学的及び心理社会的)も関与しているとされている。
抗ドーパミン作用の強い薬物の有効性から、 ドーパミン系の過活動が想定されている。
また、強迫性障害の合併が多いことや、強迫性障害にはセロトニン再取込み阻害剤が有効な場合があることから、セロトニン系の関与も示唆されている。
さらに、淡蒼球に投写する線条体の繊維でオピオイドの一つであるディノルフィンの減少が認められたという神経病理学的所見や自傷行為にオピオイド拮抗剤が有効であったという報告から、オピオイド系の関与も考慮される。
α2ーノルアドレナリン・アゴニストであるクロニジンが有効な場合があることから、ノルアドレナリン系の関与も考慮される。
神経心理学的には、IQが正常であっても注意、視空間知覚、運動機能に障害があるという報告がある。
薬物療法の有効性は高く、重症な場合には抗ドーパミン作用の強いハロペリドールやピモジドを使用する。とりわけハロペリドールは著効を示すが、過鎮静や抑うつなどの副作用を起こしやすいので注意が必要である。また、クロニジンが有効なこともあるとされるので、ハロペリドールなどが無効な場合には試みてもよい。同時に精神療法及び環境調整の果す役割も大きく、軽症例では精神療法のみで軽快することもあり得る。

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