妄想

妄想(delusionとは、事実と異なることを事実と確信し、論理的に説明されても訂正されないものである。妄想を抱いている本人は正しいと思っていることなので、本人にとってはそれが妄想であるかどうかは判断できない。
妄想は成立の仕方から一次妄想二次妄想に分けられる。
一次妄想とは、なぜそのような考えが起こったのか了解できないものであり、妄想気分(例:「世界が滅亡する感じ」)、妄想着想(例:「自分はキリストの生まれ変わりだ」)、妄想知覚(例:「今ネコが通ったのは自分の母が死んだからだ」)といったものが該当する。一次妄想は、一般に統合失調症の妄想形成に特有であり、特に妄想知覚はシュナイダーの一級症状に含まれている。

一方、二次妄想は抑うつ気分や幻覚など何らかの原因があって生じる妄想であり、内容により分類されている。二次妄想は統合失調症に留まらず、認知症や気分障害など幅広い精神疾患で見られる。
その中で、微小妄想は、抑うつ気分や自我感情低下を背景とし自己を過小評価するという内容のものであり、具体的には裕福であってもお金がないという貧困妄想、重大な罪を犯してしまったという罪業妄想、自分は治る見込みのない病気になったと確信する心気妄想がある。
これと反対なのが、躁状態の高揚感、爽快気分から自己を過大評価する誇大妄想である。誇大妄想の例としては、自分が高貴な血筋であるという血統妄想、自分は偉大な預言者だという宗教妄想、自分は特定の有名人の恋人だという恋愛妄想などがある。これらの誇大妄想は躁病や統合失調症で見られる。

これ以外の二次妄想として、自分が他者から害を加えられていると考える被害妄想がある。被害妄想はその種類によって、よく見られる疾患が異なる。例えば、自分の持ち物が盗られたという盗害妄想物盗られ妄想)は認知症高齢者(特にアルツハイマー型認知症)でよく見られるほか、配偶者や恋人が他の異性に浮気しているという嫉妬妄想は慢性アルコール中毒者によく見られる。この他、統合失調症では幻覚を説明するために被害妄想を生じることがあり、例えば味が変に感じる(幻味)と食物に毒が入っていて他人が自分を毒殺しようとしていると考える被毒妄想や、自己の行為に随伴して口出しをする形の幻聴に伴って、自分に対し盗撮機が仕掛けられて常に見張られていると考える注察妄想などがある。

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