下垂体腺腫

脳腫瘍の中で17%を占め、頻度としては第3位である。下垂体前葉細胞由来の良性腫瘍で、ホルモン過剰症状と腫瘍発育による局所圧迫症状がみられる病気である。様々な病態がみられるが、頻度としては約40%がホルモン非産生腫瘍、約30%がPRL(プロラクチン)産生腫瘍、約20%がGH(成長ホルモン)産生腫瘍、約数%がACTH(副腎皮質刺激ホルモン)産生腫瘍の順で、そのほかのホルモン産生腫瘍はほとんど見られない。好発年齢は30~49歳である。
症状として最も多く、初期から発症するのは両耳側半盲である。これは腫瘍による視交叉の圧迫により生じる。ホルモン産生腫瘍はホルモン過剰症状を呈するので腫瘍が小さいうちに発見されることが多いため、圧迫症状はホルモン非産生腫瘍で見られることのほうが多い。また、下垂体には血行が豊富なので、下垂体腫瘍が急激に増大して下垂体の血管が破綻すると、急激に強頭痛、悪心、嘔吐、眼球運動障害、両耳側半盲などの症状が起こることがある。これらの症状が得られたらすぐにCT検査をし、緊急手術を行う必要がある。
その他、ホルモン非産生腫瘍では腫瘍によって下垂体前葉の内部の細胞も圧迫されたため、下垂体前葉機能不全に陥る。このうち最も侵されやすいのはGH産生細胞とゴナドトロピン産生細胞である。PRLは分泌が低下することも、過剰になることもある。
PRL産生腫瘍ではPRLが過剰になるため、女性では乳汁分泌と無月経という症状がみられ、男性では性欲低下がみられる。
GH産生腫瘍では、GHが過剰になるため、骨端線が閉鎖する前の比較的若い人では巨人症、骨端線が閉鎖した後の成人では末端肥大症がみられる。また、GHの血糖上昇作用によって二次性糖尿病、脂質異化作用によって高脂血症、電解質蓄積作用によって高血圧を引き起こすこともある。
ACTH産生腫瘍では、ACTHが過剰になるのでCushing症候群(中心性肥満、満月様顔貌(ムーンフェイス)、高血圧 、糖尿病症状、 皮膚線条 、筋力低下 、骨粗鬆症など)がみられる。
診断にはCTでの下垂体部での腫瘍の確認が必須である。
治療としては、経蝶形骨同アプローチによる腫瘍全摘が一般的である。(Hardey手術)腫瘍が側方に進展しているものや、再発のものの場合は開頭術で摘出することもある。腫瘍残存がある場合は、γナイフなどで放射線の定位放射を行うが、副作用が強いためブロモクリプチン(ドパミン受容体刺激作用をもつ)を投与する化学療法が用いられることもある。

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