味覚

味覚とは食物等に含まれる化学物質が唾液に溶け、舌等にある受容器を刺激することで生じる感覚である。
味覚はそもそも口に入れたものが生物にとって必要なものかあるいは害のあるものかを大まかに把握するためのものである。味覚の基本味とされるのは塩味、酸味、甘味、苦味、旨味の
5つである。糖が引き起こす甘味は生存に必要なエネルギー源であることを知らせ、旨味は体を作るために必須なアミノ酸や核酸の存在を知らせ、塩味は電解質を保つために必要な塩分を含むことを知らせ、積極的に摂取しようとする一方で、酸味は腐敗している食べ物であることを知らせ、苦味は毒物であることを知らせ食べるのを避ける。

5つの味は舌にある味蕾で感知されるが、その味覚受容体は、塩味と酸味がイオンチャネル型で、甘味と苦味と旨味はGタンパク質共役受容体(GPCR)である。味覚に関わるGPCRは味覚受容体ファミリーとよばれ構造上、Taste 1 ReceptorT1R)(甘味受容体と旨味受容体が所属)とTaste 2 ReceptorT2R)(苦味受容体)に分けられている(ちなみに、ネコは旨味受容に関わるT1R2を遺伝的に欠いているので甘味に対して無関心である)。苦味は他の味覚よりも閾値が低い(感受性が高い)が、これは苦味がもともと毒物を知らせるものであることによると考えられる。
味覚の伝導は次のとおりである。まず、味覚に関わる3つの脳神経(顔面神経・舌咽神経・迷走神経)が延髄の孤束核を通り、視床の後内側腹側核(VPM核)に入る。その後、第1次味覚野(島弁蓋部)を経由して第2次味覚野である眼窩前頭皮質や扁桃体へ行く。扁桃体と眼窩前頭皮質には嗅覚などの情報も伝えられており、これらの情報が統合されていると考えられる。また、第1次味覚野では空腹、満腹に関わらず味刺激に対し反応に変化はないが、第2次味覚野になると満腹状況に応じて「おいしさ」に対応する反応が減じてくるのが認められる。また、扁桃体は内臓感覚も受けており、食物を摂取したときに腹痛や下痢など胃腸障害を起こすとその食物を受け付けなくなるという味覚嫌悪学習に関わっていることが知られている。

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