全身性の結合組織病変で、血管障害を中心に展開される炎症性・線維性変化を主体とする疾患である。手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺繊維症などの諸臓器の病変を伴う。30~50歳代の中年女性に多く(男女比1:7)、小児にはまれである。
血管修復機構の破たんにより、内膜が肥厚し、内腔が狭小することで、血流が不足し、慢性の虚血状態になることと、この虚血状態によりTGF-β、PDGFなどのサイトカイン・成長因子の伝達以上によって繊維芽細胞が活性化され続け、コラーゲン等の過剰産生や沈着が起こることという二つの要素がSScの病変形成に大きく関与している。
SScは初期には手指が浮腫上腫脹をきたし、ソーセージ様手指と呼ばれる。また、手指、足指の細動脈が発作性に収縮することにより、皮膚の色調が正常→白→紫→正常へと変化するRaynaud現象が必ず起こる。この現象は、気温の低下やクーラーなど全身が冷える状況で発症し、増悪しやすい。またストレスや緊張などの交感神経刺激も誘因となりうる。SScの皮膚硬化は手指、足(四肢の末端)から始まり、体感へと広がっていく。浮腫期→硬化期→萎縮期と3つの病期を経過する。その後、全身の臓器(皮膚、消化管、筋・骨格系、肺、心肺、腎臓など)に硬化性病変(線維化、血管障害)をきたし様々な臨床症状を呈する。消化管病変は食道下部3分の2に顕著で、蠕動運動の低下により胃食道逆流症や嚥下困難をきたすことがある。心臓病変では心筋の線維化に伴い、伝達障害により様々な不整脈を起こしうる。腎では、血管内膜の肥厚による腎障害がみられる。腎血管内狭小化によるRAA系が刺激され、突発的に重症高血圧や乏尿による腎不全をきたす腎クリーゼを起こすこともある。
SScでは約90%の症例が抗核抗体陽性となる。抗トポイソメラーゼⅠ(抗Scl-70)抗体は本症に特異的にみられる。一方で、陽性率は30%とそれほど高くないので、ほかの非特異的な抗核抗体も検査する必要がある。
SScの治療は症状の多様性から、確立された治療法がなく、生活指導が主となる。薬物療法としては、各臓器病変に応じて決定される。SScに伴う肺病変は予後が悪いので診断がつき次第すぐに治療する。
SScは典型的なびまん型SScと比較的軽症な限局型SScに分類できる。びまん型SScは硬化が肘関節よりも近位に及ぶもので、硬化はRaynaud現象と同時または遅発する。また、毛細血管が脱落するという特徴があり、主な臓器症状は肺・心臓・食道・腎臓である。抗核抗体としては抗トポーソメラーゼⅠ抗体と抗RNAポリメラーゼ抗体が主である。進行が急速である。また、限局型SScは硬化が肘関節遠位にとどまるもので、Raynaud現象が硬化に先行し、毛細血管が拡張し皮下が石灰化するという特徴がある。主な臓器病変としては肺(高血圧症)、食道、PBC(原発性胆汁性肝硬変)などがある。抗セントロメア抗体が効率に陽性となる比較的予後良好な疾患である。この亜型としてCREST症候群があげられる。(※)
※CREST症候群
Calcinous(皮下石灰化)
Raynaud’s(レイノー現象)
Esophageal dysfunction(食道蠕動低下)
Sclerodactylia(強指症)
Telangiectasia(毛細血管拡張)