QT延長症候群(LQTS)
QT延長とは心筋活動電位の延長によりQT間隔が延長するもので、torsades de pointes(TdP)という特殊な多形性心室頻拍をきたすのが特徴的である。失神発作を繰りし、突然死に至ることもある。原因には先天性(遺伝性)と二次性(後天性)がある。
臨床
- めまい、失神発作を繰り返す。
- 非発作時の心電図で、QT延長(補正QT間隔〔QTc〕=QT/√RRが0.48秒を超える)を認める。
- 発作時にはtorsades de pointes(TdP)という特殊な多形性心室頻拍を引き起こす。
- triggered activity (撃発活動)の1つである早期後脱分極(EAD)が原因となってTdPが発生する。
- 発作は30秒以内に自然に治まることが多いが、持続したり、心室細動(VF)に移行し、突然死に至る場合もある。
- なおQT延長そのものでは無症状であり、TdPを生じた場合に失神発作などをきたす。
- 先天性LQTSにはKチャネルの機能異常を伴う遺伝性疾患が原因となる場合と、特発性の場合がある。
- 二次性LQTSの原因には、抗不整脈薬や向精神薬、抗菌薬などの薬剤、完全房室ブロックや洞不全症候群などの高度な徐脈を伴う基礎疾患、低K血症、低Mg血症、低Ca血症などの電解質異常などがある。
治療
- TdPを繰り返す場合は硫酸マグネシウム静注が有効である。
- 先天性(遺伝性) LQTSでは、β遮断薬、一時ペーシング(徐脈が高度の場合)が有効である。
- なお、イソプロテレノール(β刺激薬)は禁忌である。
- 二次性(後天性) LQTSでは、原因の除去が基本となる。
- 薬剤性ならば原因薬剤の中止を行う。
- 高度な徐脈があれば一時ペーシング、イソプロテレノール点滴静注を行う。
- 低K血症があればK製剤を投与する。
- また、再発予防のための治療としては、先天性LQTSでは症例に応じてβ遮断薬の投与やICD、徐脈性不整脈によるLQTSではペースメーカー植込みを考慮する。