マールブルグ病


概略
ウイルス性出血熱のひとつであり、別名ミドリザル出血熱(Vervet monkey hemorrhagic fever)とも呼ばれる。その後、アフリカのケニア、ジンバブエ、ザイール(現コンゴ民主共和国)などで発生し、いずれも1〜2名で死者も出ているが、 エボラ出血熱のように一度に多数の感染者・死者を出した例はない。1類感染症に定められている。

疫学
 マールブルグ病の発生にサルが関与したのは1967 年の事例のみで、以後のアフリカでの発生ではサルとの接触は全く知られていない。エボラ出血熱同様に自然界の宿主は不明であり、どのような経路で最初のヒ トへ病原体が伝播するかについても謎のままである。今までのエピソードはドイツ以外ではアフリカで4 回ある

病原体
 エボラウイルスと同様にフィロウイルス科(Filoviridae)である。抗原性は異なり交差しないが、電顕上の形態は酷似している。エンベロープを持ち桿菌状で、平均長径が790nm 、短径は80〜90nmである。粒子は非対称でひも状、ゼンマイ状等多形性を示す。1本鎖RNA を有し、ウイルスはVero 細胞、BHK 細胞などで細胞変性効果を示す。実験的にはアカゲザル、ミドリザル、モルモット、ハムスター、マウス等で100%感染を起こし、致命的となる。自然界にお けるこのウイルスの宿主は現在も不明であり、どのようにしてヒトにウイルスが伝播されるかも全く分かっていない。ヒトからヒトへの感染は、感染者や患者の 血液、体液、分泌物、排泄物などの汚染物との濃厚接触による。手袋等の防護策で感染は防げるとされ、医療の場での空気感染による拡大はないとされる。

臨床症状
 感染者に対する発症者の比率はよく分かっていない。潜伏期間は3〜10日である。一次感染の潜伏期間は3〜7日(二次感染では〜10日と長くなることも ある)で、症状はエボラ出血熱に似ており、発症は突発的である。発熱、頭痛、筋肉痛、背部痛、皮膚粘膜発疹、咽頭痛が初期症状としてみられる。激しい嘔吐 が繰り返され、1〜2日して水様性下痢がみられる。診断上皮疹は重要で、発症後5〜7日で躯幹、臀部、上肢外側等に境界明瞭な留針大の暗赤色丘疹が毛根周 辺に現れる。重症化すると、散在性に暗赤色紅斑が顔面、躯幹、四肢にみられる。

病原診断
 血液等からウイルス分離を行うが、迅速診断にはELISAや免疫蛍光法で抗体を検出する。あるいは、PCR 法等でウイルス遺伝子を検出する。検体は血液、咽頭ぬぐい液、胸水、体液、その他の組織等である。発症後2 カ月程して症状は軽快しても、精液、前眼房水等からウイルスが分離された例がある。

治療・予防
 対症療法以外の特異的治療法はない。また、感染予防ワクチンはない。患者や検体に接触した医療関係者や家族について、一定期間監視が必要な場合は実施する。

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