二分脊椎

二分脊椎とは、神経管閉鎖障害(NTD)のうち、腰仙部の脊髄・髄膜・皮膚などに見られる先天奇形のことをいう。尾側神経孔の閉鎖障害によって生じる。
二分脊椎の原因は不明であるが、神経管が閉鎖する過程で、葉酸欠乏によるDNA合成阻害、薬剤(バルプロ酸など)、母体の糖尿病、肥満、喫煙や、遺伝的素因のような様々な要因が関与していると考えられている。妊娠二週間前〜妊娠十二週までにかけて400μg日の葉酸を摂取し続けることにより、二分脊椎の発症頻度を70%低下させたという報告があるため、妊娠可能性のある女性には必要量の葉酸摂取が推奨されている。また、大量のアルコール摂取は葉酸の吸収、代謝をさまたげるため、妊娠中の飲酒は控える必要がある。
二分脊椎は、外見上の所見から、嚢胞性または潜在性に、分類される。
【1】嚢胞性二分脊椎⇨脊髄髄膜瘤(脊髄披裂)
腰仙部に好発で、皮膚欠損がみられたり、脊髄が外表に露出した開放型NTDに分類される。二分脊椎の中で最も重症である。症状としては、病変部位以下の運動麻痺と反射消失、感覚障害、足部の変形、膀胱直腸障害(肛門の弛緩、尿失禁)がみられる。ほぼ全例にChiari2型奇形を合併し、約90%で、治療(シャント術)を必要とする水頭症を合併する。髄液感染や脊髄の変性を防ぐため、早期(生後48時間以内)に閉鎖手術(整復術)を行う。脊髄の形成と硬膜の閉鎖、硬膜腔の形成と軟部組織、皮膚の形成を行う。術後管理としては排尿障害、下肢の変形や機能障害に対する治療、訓練などを行う。水頭症の症状が出現した場合、V-Pシャントを行う。出生前に診断された場合は、分娩に伴う腫瘤の損傷を、防ぐため帝王切開が行われる。適切な治療が行われれば、生存患児の70〜80%で正常な知能発達が見られる。また85%の患児で、排尿の自己管理が可能となる。
【2】潜在性二分脊椎
女児に好発で、原因疾患によるが腰仙部に好発する。脊椎や脊髄の異常が、外見からはわからないものをいう。脊髄脂肪腫、先天性皮膚洞、割髄症、終糸肥厚症などの、奇形が認められる。奇形病変によって尾側に固定された脊髄が成長とともに牽引されると、学童期以降に神経症状(下肢の運動、感覚障害、膀胱直腸障害、腰部や下肢の疼痛)が出現する(脊髄係留症候群)。脊髄尾側が脂肪腫によって固定されているため、それより上部は成長や運動により過度に進展する。
皮膚症状としては、皮膚の膨隆(皮下脂肪腫)、皮膚の陥没、母斑、限局性多毛などがある。これらが主に腰背部正中に生じる。
治療としては原因病変によって異なるが、主には脊髄の係留解除を目的として、脂肪腫の摘出などを行う。

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