前期破水(PROM)

陣痛発来(分娩開始)以前に卵膜の破たんをきたし、羊水が流出したものを前期破水(PROM)という。全分娩の510%にみられる。

前期破水の原因は、前回妊娠時の前期破水の既往、絨毛膜羊膜炎、羊水過多、多胎妊娠、胎位異常、頸管無力症、頸管円錐切除の既往、喫煙、妊娠中の性交渉などがあげられるが、なかでも絨毛膜羊膜炎が最も多い。管理上の問題から前期破水は37週未満に発症するpretermPROM(2030)37週以降に発症するtermPROM(7080)に分けられる。臨床上問題となるのは新生児の合併症の生じやすいpretermPROM(特に妊娠34週以前)である。TermPROMでは、24時間以内に90%陣痛が発来する。またpretermPROMでは、約50%が24時間以内に、7080%が1週間以内に陣痛が発来し、切迫早産となる。分娩開始から子宮口開大8cmまでに破水したものを早期破水といい、抗議の前期破水に含まれる。

PretermPROMでは、羊水の流出による羊水過少が原因となって、卵膜が敗れることによる臍帯脱出・子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)、臍帯が圧迫されることによる胎児機能不全、子宮壁により圧迫されることによる肺低形成・四肢の変形・関節拘縮、子宮内圧の低下による常位胎盤早期剥離などの合併症を起こす。妊娠の継続を行うときには、このような合併症に注意する必要がある。

持続的に羊水が流出している場合や、子宮口が開大して胎児部分を確認できる場合は比較的容易に破水の診断ができる。しかし、それらが明らかでない場合は、以下のような方法で診断を行う。

    BTB試験紙法…正常では膣内は弱酸性(pH4.56.0)で、羊水は中性から弱アルカリ性(pH7.08.5)を示す。羊水流出により膣内のpH7.08.5になっていないかどうかを調べる。満期の破水を診断する場合、最も一般的に用いられる方法で、前期破水の診断としてもほかの検査と併用して用いられることが多い。

    生化学検査…おもに羊水中に存在し、膣内分泌物には含まれないαフェトプロテイン(AFP)、インスリン様成長因子結合蛋白-1(IGFBP-1)、癌胎児性フィブロネクチン(fFN)などを検出する。正診率・感度・特異度ともに高く、pretermPROMの診断において信頼性の高い検査方法である。

    顕微鏡検査…採取した膣内貯留液をスライドグラス上で乾燥させると、羊水にはNaclが多く含まれるため、顕微鏡でシダ状結晶を確認できる。偽陽性率が高く、羊水の流出量が少ないと、確認が困難であるため、現在、臨床ではあまり用いられていない。

 

妊娠34週未満のpretermPROMでは、胎児の成熟を待つため子宮収縮薬や抗菌薬をできるだけ投与して34週まで妊娠の継続を図る。ただし、子宮収縮抑制薬を用いても奏功せずに早産に至ってしまうことが多く、90%以上が1週間以内に早産に至る。妊娠34週以降のtermPROMでは、児は正期産児と同じように成熟しており、そのまま妊娠を継続させるよりも分娩誘発を行ったほうが感染リスクが低いため、分娩誘発を行う。


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