大動脈炎症候群
大動脈炎症候群は、大動脈と主要分枝、ときには肺動脈などの太い動脈に好発する非特異的炎症とその瘢痕化により、二次的に狭窄·閉塞·拡張を生じる慢性血管炎である。大動脈弓およびその分枝が侵されることが多いが、胸部下行大動脈から腹部大動脈にもみられる。病因については自己免疫の関与が疑われるが、依然不明である。
症状は、病変の部位と頻度、または動脈炎の活動期か非活動期かにより著しく相違するが、多くは予後良好である。
臨床
- 若年女性(15~35歳)に好発し、男女比は1:8である。
- 発熱、頸部痛、易疲労感、全身倦怠感などの上気道炎に似た症状で発症し、その後脳虚血症状(めまい、失神)、上肢のしびれ・冷感(血管狭窄による症状)を訴える。
- 上肢脈拍の減弱、消失、上肢血圧の左右、上肢・下肢の血圧差(上肢<下肢)(鎖骨下動脈病変)
- 下肢脈拍の亢進または減弱(胸部下行大動脈・腹部大動脈病変)
- 頸部、背部、腹部など狭窄部位での血管雑音(bruit)
- 心雑音(主に大動脈弁閉鎖不全症(AR)による)
- 若年者の高血圧
- 低血圧眼底、高血圧眼底、視力低下
診断
- 大動脈造影(DSA)、CT、MRAにて、血管壁の石灰化、血管の狭窄・閉塞・拡張病変を確認
- 赤沈↑、CRP(++)、WBC ↑、γ-グロブリン↑が確認されれば診断は確定する
治療
- ステロイド療法が第一選択であり、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)を用いる。ステロイド抵抗性がある場合、免疫抑制剤(シクロホスファミド、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロスポリンなど)を用いる。
- 心臓の病変、大動脈の拡張性病変、狭窄性病変が認められる場合は外科的治療を考慮する。