心臓粘液腫
原発性心臓腫瘍の75%を占める良性腫瘍のうち、心臓粘液腫が50%と最も多い。心臓粘液腫の約80%が左房に生じる。(左房粘液腫)
粘液腫が僧帽弁に嵌入し、僧帽弁狭窄症(MS)に似た動態を示す。しかし、炎症所見を有したり、体位変換により聴診所見が変化したり、粘液腫が断片化することで末梢動脈への塞栓をきたしたりする点が異なるので、鑑別することが可能である。
粘液腫が有茎かつ左心系に存在する場合、致死的な塞栓症状を引き起こす可能性が高いので、速やかに完全摘除術を行う。
臨床
- 30〜60歳代の女性に好発する。(男女比1:3)
- 全身倦怠感、体重減少、発熱、関節痛、貧血がみられ、血液検査では赤沈上昇、WBC上昇、CRP(+)、γ-グロブリン上昇がみられる。
- 聴診においては、重力により粘液腫の心室内における位置が変わるため、体位により聴診所見が変化する。左房に粘液腫がそんざいする場合、その聴診所見は僧帽弁狭窄症(MS)に類似した拡張期ランブルが認められ、仰臥位から左側臥位では雑音が増強する。また、tumor plopとよばれる低調な拡張早期過剰心音が聴取される。これは拡張早期の左房から左室への血流により、腫瘍が僧帽弁口に嵌入するために生じると考えられている。
- 完全切除できれば、再発率1〜5%と予後良好である。(家族性は除く)
- 家族性の心臓粘液腫は、非遺伝性の症例と比べて若年発症、男子に好発、多発性、再発しやすいなどの特徴がある。これらの特徴を認めた場合、心エコー検査による血縁者のスクリーニングを行う。
診断
- 心エコーで心房(まれに心室内)に腫瘤エコーがみられたとき確定診断とする。
治療
- 早急に外科的に摘出する。
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