ノックアウトマウス
概略
ある遺伝子の欠損マウス。最初から特定遺伝子の機能を欠失させたノックアウトマウスと、特異プロモーター下に目的遺伝子を切り出す酵素を発現させることにより(Cre recombinase & LoxPのシステム)発生の一定時期あるいは組織特異的に遺伝子欠損を誘導するfunctional knockout modelとがある。Cre/LoxPシステムは通常のノックアウトモデルでは胎児死亡につながるような発生期の個体全体にとって重要な遺伝子の組織特異的な機能解析などに有効である。
作成の大まかな流れ
1)コンストラクト(ターゲッティングベクター)の作成
一般にはガンシクロビル感受性であるチミジンキナーゼをもったベクターに目的遺伝子が機能的蛋白を合成できないよう翻訳部分を大きく欠損させるべく、遺伝子の両端付近をhomologous recombinationのアームとして約3.5-4kbずつもってきて、ネオマイシン耐性遺伝子をはさんでクローニングする。
2)ES細胞への遺伝子導入(electroporation)
上記コンストラクト(1ヶ所で切断してlinearizeして)ES細胞に導入すると、一定の確率で細胞のゲノムとの間でhomologous recombinationがおこり、コンストラクト中のネオマイシン耐性遺伝子をはさんだアーム部分が相当位置に導入される(ゲノム遺伝子片鎖の目的遺伝子がネオマイシン耐性遺伝子に入れ替わる)。
3)ES細胞のセレクション
遺伝子導入後のES細胞をガンシクロビルとネオマイシン存在下で培養する。ガンシクロビルにより、ベクターごとゲノム遺伝子に無作為にくみこまれた細胞は死に(チミジンキナーゼ存在により)、ネオマイシンにより耐性遺伝子の入った細胞のみ生存する。これで正しい組み換えのおこったES細胞を得るための効率をあげることができる。さらに正しい組み換えが起こった場合のみネオマイシンが発現するように目的遺伝子のプロモーター下にネオマイシン耐性遺伝子を組み込んでおくとより効率よいセレクションが行えることもある。
4)ES細胞のスクリーニング
ES細胞のコロニーが育ってきたら、サザンブロットで遺伝子が正しく挿入された細胞魂をスクリーニングする(PCRによる簡易スクリーニングも可能)。ゲノム遺伝子をBamHIなど出現頻度の低い制限酵素で大きな断片に切断し、アーム部分など組替え前後両方で存在する部位に対するプローブをハイブリさせる。正しく組み変わったものでは片側のalleleで組み変えの起こった断片の長さが変わり、従来の断片の長さとそれぞれ適合した2サイズのバンドとして検出される。
5)ES細胞のblastocystへの導入とマウスへの着床ーキメラマウスの誕生
正しい組替えの行われたゲノム遺伝子をもつES細胞を分裂早期の受精卵に導入し、マウス体内にもどして着床させる。ES細胞は受精卵の一部として組みこまれ、キメラマウスが誕生する。
6)かけあわせによる目的遺伝子欠損マウスの作成
キメラマウスの生殖細胞の一部が遺伝子組替えES細胞を源としていれば、その生殖細胞から発生した子供が目的遺伝子欠損ヘテロマウスとなる。通常尾の先を少し切断してDNAを採取しゲノムタイピングを行う。さらにヘテロマウスどうしを掛けあわせてホモの目的遺伝子欠損マウスを得る。
phenotype data base
よいものがあればいろいろ紹介してください。
とりあえず
Japan mouse strain resources database
なんかがかなり充実してます。(他にもあれば教えてください~)
参照