悪性高血圧

全高血圧患者の1%以下に、拡張期血圧の著しい上昇、進行性の臓器障害(脳・心臓・腎臓・眼底)をきたす予後が極めて不良な一群があるもののことをいう。30~40歳代の男性に多く、60歳以上では少ない。
診断基準として
①    治療前拡張期血圧が常に130mmHg以上を示すこと
②    Keith-Wagener分類Ⅳ群の眼底所見(著名な硬化性変化に加えて、網膜浮腫・軟性硬斑・出血があり、動脈の狭細が著しく、乳頭浮腫がみられる)を示す。
③    急激に進行する乏尿や尿毒症などを伴い、放置すれば腎不全に」いたるような腎機能障害を示す。
④    急性憎悪し、特に体重減少を伴う脳症状(頭痛、視力障碍、高血圧性脳症(※)など)や心不全症状を多く伴う全身状態
上記の4つをすべて満たす場合、悪性高血圧A群と診断され、上記の1~3の条件のうちどれか一つが基準に合致しないが、他3条件は満たすものを悪性高血圧B群と診断する。予後を規定する主要因は腎機能障害である。
病理学的所見としては腎臓の小動脈にフィブリノイド壊死と増殖性動脈内膜炎(内膜の肥厚・炎症細胞の浸潤)が見られる。高血圧を生じるような原因疾患がないのに、腎臓の小動脈にフィブリノイド壊死を認める場合は、病理学的に悪性腎硬化症と呼ばれる。
治療としては強力な降圧薬を用い、透析療法などを併用する。
(※高血圧性脳症・・・急激または著しい血圧の上昇により脳血流の自動調節能が破綻し、脳浮腫を生じる状態であり、高血圧緊急症の中でも最も重症である。頭痛・悪心・嘔吐・意識障害・けいれんなどの症状を呈し可逆性後白質脳症症候群の原因となりうる。CTにより脳出血の否定が必要である。)

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