成長ホルモン分泌不全性低身長

種々の原因により下垂体から成長ホルモン(GH)分泌が低下して成長速度が低下してその結果低身長となる病態を言う。身体の均整はほぼ年齢相当であるが、骨年齢は歴年齢の80%以下(平均身長の-2.0SD)と遅延する(必発ではなく、器質性では発症から時間がたたないと明らかとならないこともある)という特徴がある。また、GH単独欠損症では正常よりやや遅れるものの二次性徴は発現する。乳幼児では低血糖による症状が出現しやすい。また重症例では筋緊張低下も見られる。

病因としては原因が明確ではない特発性のものと、原因疾患が明確な器質性とに分類される。多くは特発性である。器質性では、複合型下垂体ホルモン欠損症としてほかの下垂体ホルモンの分泌も障害されることが多い。また。まれに遺伝性のものがあり、GH分泌のみが障害されるGH単独欠損症や、特定の組み合わせの下垂体ホルモン分泌低下を示すことがある。

また、特発性に分類される症例に周産期異常の既往(骨盤位分娩・吸引分娩・出生時仮死など)を認めることがある。画像診断によってこれらの症例ではMRIにて不連続な

下垂体茎、異所性後葉や小さな下垂体などの所見を呈するものが多い。このように出生時の分娩異常による下垂体門脈系などの血流障害が疾患の原因と考えられ、画像上明らかなものは器質性病変に分類することもある。

成長障害を疑ったら、まず成長曲線を作成することが重要である。出生時の身長・体重は正常であるが、特発性では乳児期より成長障害が始まる。成長速度の低下のため時間とともに平均との差が広がり、身長が平均身長の-2.0SD(平均-標準偏差×2)以下となる。器質性のものでは原疾患の発症時期に一致して成長速度の低下が出現する。

また、確定診断には成長ホルモン分泌刺激試験を行う。GHは脈動的に分泌されているため日内変動が大きく、1ポイントのみの測定では分泌が低下しているのかどうかが判断できない。そのため、確定診断としては成長ホルモン分泌刺激試験を行う。分泌刺激試験は必要に応じてインスリン・アルギニン・L-DOPA・クロニジン・グルカゴンなどのうち2種類以上の薬剤を用い、刺激をしてから30分おきに血中のGHを測定して、最頂値が6.0ng以下の場合GH分泌不全症と診断する。

治療としてはGH補充療法を行う。成長ホルモンはペプチドホルモンのため、経口摂取すると消化管で消化され、効果がなくなってしまうため、皮下注射が行われる。週に67回、就寝前に大腿部・臀部などに患児自身もしくは保護者が注射する。不足しているGHをできるだけ早期から補充することで、正常身長への早期回復が期待できる。

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