日本脳炎

日本脳炎は、蚊によって媒介される日本脳炎ウイルス(JEV)により生じる感染症で、蚊の繁殖する夏に流行する。アジア地域では風土病と化しており、わが国でも昭和42年まで毎年千名以上の報告があったが、ワクチンの普及などにより現在では年間数例をみる程度になった。感染しても多くは不顕性であるが、発症した場合の致命率は25%と高く、後遺症を残すことも多い。

臨床像

  • 蚊に刺されてから5〜16日後に発症する。
  • 数日間の発熱、頭痛、嘔吐などの症状のあと、髄膜刺激症状(項部硬直)や脳炎症状(意識障害、けいれん)があらわれる。人によっては神経症状の方が先にあらわれることもある。
  • 感染のほとんどが不顕性感染(0.1〜0.3%に脳炎が発生)であるが、発病した場合の致命率は高く、約25%が死亡する。特に幼児や高齢者での死亡率が高い。また、生存しても約30〜50%に後遺症が残る。
  • 後遺症は障害された神経の部位により麻痺、知能低下、性格異常など、様々である。

感染経路

  • 日本脳炎ウイルス(JEV)はブタやトリと蚊の間で感染環をつくっている。とくにブタはJEVの増幅動物として重要である。
  • JEVに感染したブタやトリを吸血した蚊の体内でウイルスが増殖し、唾液腺に蓄積される。この蚊がヒトを吸血することによりヒトに感染する。日本などの温帯ではコダカアカイエカによって媒介される。
  • なおヒトからヒトへの感染はない。

診断方法


確定診断は
  1. ウイルス遺伝子の検出(PCR法)
  2. 特異的IgM抗体の検出
  3. ペア血清で4倍以上の抗体価上昇
による。

治療法

  • 対症療法のみとなる。
  • 本症は発症した時点で既にウイルスが脳内に達し脳細胞が破壊されているため、治療が難しい。そのため予防が最も大切であり、蚊の対策や予防接種が重要となる。

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