水泡性類天疱瘡
天疱瘡と似た所見を示すが、全く異なる病態なので、鑑別が重要である。
水泡性類天疱瘡は、抗ヘミデスモソーム抗体(基底膜部のヘミデスモソームの構成成分であるⅩⅦ型コラーゲン(BP180)、BP230に対する自己抗体)により、表皮下水泡を生じる。高齢者に多く、内臓悪性腫瘍を合併していることもある。
症状としては、かゆみを伴う紅斑の上に、表皮全体が被膜となって比較的大きく破れにくい緊満性の水泡が多発する。ときに粘膜疹が生じることもある。病理組織学的には表皮下水泡がみられ、水泡内や真皮上層に好酸球浸潤が認められる。また蛍光抗体法にて表皮基底膜部にIgGとC3の沈着が認められる。1M食塩水処理皮膚(※)を用いた蛍光抗体間接法では、表皮側にIgGの沈着がみられる。(後天性表皮水泡症との鑑別に用いる。)ELISAにより、ⅩⅦ型コラーゲン(BP180)に対する抗体が陽性となる。
一見健常な皮膚に圧迫・摩擦を加えると、容易に表皮剥離や水泡を生じるNicolsky現象は陰性で、水泡の細胞成分を検鏡するTzanck試験も陰性になる。これが、天疱瘡との違いである。
治療としては、ステロイド内服が基本で、難治例では免疫抑制薬の内服、血漿交換を行う。
(※1M食塩水処理皮膚→正常皮膚を1Mの食塩水に4℃、48時間浸すことで基底膜透明帯部分で表皮と真皮に剥離する方法である。これにより、ⅩⅦ型コラーゲン(BP180)(水泡性類天疱瘡に特異的な反応抗原)は表皮側、Ⅶ型コラーゲン(後天性表皮水泡症の特異的な反応抗原)は真皮側に分離される。この皮膚を用いて、蛍光抗体間接法により患者血清と反応させると、水泡生類天疱瘡では表皮側、後天性表皮水泡症では真皮側に反応する。)