腹圧性尿失禁

くしゃみなどの腹圧上昇時に、膀胱内圧が尿道閉鎖圧を上回ることで、尿の漏出が起こる状態のことである。出産や加齢に伴う骨盤底筋群の脆弱化と尿道自体の閉鎖機能の低下により生じる。多産婦や中高年女性に好発し、患者の85%が女性である。

腹圧性尿失禁には、尿道過可動と内因性括約筋機能不全(ISD)2つの病態がある。実際にはこの二つの病態が様々な程度にかかわって発症する。尿道過可動とは、骨盤底筋群がぜい弱化し、尿道、膀胱が下垂している。下後方のハンモック構造が弱いため、腹圧上昇時に尿道が押し付けられず、尿道が閉鎖されないため、尿失禁が起こる。圧力的に見ると、膀胱内圧上昇時に尿道閉鎖圧が上昇せず、尿失禁が起こる。膀胱尿道造影画像では膀胱頸部が下垂し、後部膀胱尿道角は180°に開大している。原因としては、加齢・出産・肥満・骨盤内手術・先天性骨盤底形成異常などがある。また、内因性括約筋機能不全とは、尿道括約筋など、尿道自体の閉鎖機能が低下し、安静時でも膀胱頸部、近位尿道が開大している。尿道がしっかりと閉鎖されていないため、軽度の腹圧上昇で尿失禁が起こる。圧力的に見ると、安静時の尿道閉鎖圧が低いため、軽度の腹圧上昇で尿失禁が起こる。膀胱尿道造影で膀胱頸部・尿道の開大がみられる。膀胱から鎖が抜けかけている。原因としては加齢、エストロゲン低下に伴う尿道粘膜萎縮、婦人科手術による尿道変化、神経障害による尿道括約筋機能低下などがある。

治療としては保存的療法が第一選択である。保存的療法としては骨盤底筋体操(ケーゲル体操)と薬物療法(α受容体刺激薬、β受容体刺激薬など)がある。奏功しない場合は外科的手術として尿道スリング手術(TVT手術TOT手術)を行う。尿道スリング手術とは、中部尿道の下にメッシュ状のテープを通して、尿道を支え、恥骨尿道靭帯を補強する。現在第一選択となっているのは、恥骨尿道靭帯を補強するTVT手術である。恥骨後面を穿刺してテープを通し、恥骨上に導出する。骨盤内臓器の誤穿刺や骨盤内出血のリスクが高い。また、テープのカーブが急なため、術後の排尿困難が多い。また、TOT手術は膣ハンモックを補強する。閉鎖孔を穿刺しテープを通し、閉鎖膜に固着する。そのため、骨盤内臓器の誤穿刺や骨盤内出血のリスクが低い。テープのカーブが緩やかなので、術後の排尿困難が少ない。

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