腹膜透析
腹膜透析は腹腔内カテーテル留置術を施行し、そこから透析液の注液・排液を行う。透析液はあらかじめ各物質の濃度が調整されており、拡散による物質の移動が生じる。腹膜は細孔のサイズが大きいため、小~中分子量の物質が透過できる。血液と透析液が平衡に達すると拡散は起こらなくなる。透析液はグルコースの濃度が高いため、浸透圧による限外濾過が生じ、水が移動する。グルコースは拡散により血液側に移動して浸透圧が低くなるため、時間がたつんつれて除水効率が下がり、透析液の交換が必要となる。血液と透析液の濃度が等しい物質は移動しない。腹膜の細孔を通過できない大分子や血球も移動しない。タンパク質(おもにアルブミン)も漏出してしまい、低たんぱく血漿になることもある。
腹膜透析は血液透析に比べて1回の透析効率は劣る。しかし、透析前後で体液組成の変動が小さく、残存腎機能は比較的長く保たれる。食事制限も血液透析よりはゆるい。腹膜が劣化するため、治療計画は5~8年が限度である。
腹膜透析は通常、20~30分の透析液交換を1日4回、毎日行い、注液してから排液するまでの間、常に透析が行われている。通院の負担が少なく(検査のために月1~2回)、社会や学業への参加がしやすい。
腹膜を透析膜として使用するため、腹膜事態に重大な合併症が生じやすい。カテーテルや出口部から細菌が侵入することで生じる感染症が最も頻度が高い。腹腔内の透析液は、至摘温度でグルコースを多く含むため、細菌が繁殖しやすい。清潔な主義を心がけることで予防する。発症した場合は、抗菌薬の投与、カテーテル抜去などを行う。腹膜炎は腹膜透析中止の原因として最多である。
また、腹膜がびまん性に肥厚し、腸管に癒着することで蠕動運動が障害され、嘔気、嘔吐、腹痛などのイレウス症状を呈する不可逆性の合併症である被嚢性腹膜硬化症が生じることもある。長期の腹膜透析、腹膜炎、高濃度グルコースの透析液などが腹膜肥厚の原因となる。8年以上の長期透析で発生率が高くなるため、発症する前に腹膜透析を終了して血液透析に移行する必要がある。