膠芽腫
アストロサイト(またはその前駆細胞)から発生する極端に未分化な腫瘍で、原発性脳腫瘍のやく9.2%、神経膠腫の約37%を占める。臨床的に最も悪性の腫瘍で、浸潤性に急速に進行する。45〜70歳代に好発である。好発部位は大脳半球(特に前頭葉)である。初発症状としては頭痛が最も多く、頭蓋内圧亢進による頭痛や嘔吐などの症状が麻痺などの局所的症状よりも多いことが特徴である。腫瘍周囲に浮腫を伴いながら浸潤性に急速に進行するので、数週間から数カ月の短い経過で頭蓋内圧亢進症状が進行すし、人格変化などが生じることもある。脳梁を介して体側の大脳半球にまで浸潤することも多い。(これをbutterfly patternという。)治療を行っても平均生存期間は12〜14か月程度である。5年生存率は6.9%と非常に悪い。高度な退形成性変化により、肉眼的にも組織学的にも多彩な所見が見られる。MRI T1強調像で境界不明瞭な等〜低信号、T2強調像で不規則な高〜混合信号を呈する。内部は壊死や嚢胞性変性を認めることが多く、腫瘍周囲には浮腫が広範に存在する。造影MRI T1強調像でリング状増強効果がみられる。実際にはより広範囲に浸潤している場合が多い。脳室周辺の浸潤により、髄液を介した播種が見られることもある。確定診断は術中の病理診断で行う。
治療としては、まず手術でできる限り全摘を目指し、術後放射線と化学療法を追加する。放射線感受性は高くないが、術後も腫瘍が残存する可能性が高いため、拡大局所照射を行い、その後局所照射を加える。化学療法ではテモゾロミド、もしくはアルキル化薬を用いる。