食道裂孔ヘルニア

食道裂横隔膜の食道裂孔をヘルニア門として、胃を中心とする腹部臓器が縦隔内へ脱出した状態をいう。横隔膜ヘルニアに分類され、その大部分を占める。それ自体ではほとんど無症状だが、胃食道逆流症(GERD)を合併すると、胸やけや前胸部痛を訴える場合がある。比較的頻度の高い疾患である。


臨床


  • 各年齢に発症するが、罹患率は小児例を除くと中年男性と高齢女性の2つにピークがあり、それぞれ病態は異なるものと考えられている。
  • 中年男性では、大食やアルコール摂取により、内臓脂肪が増加し、腹腔内圧の上昇がみられる。これによりヘルニアが生じる。
  • 高齢女性においては、加齢によって筋肉や結合組織の脆弱化が起き、骨粗鬆症などによる脊椎変形のために前屈姿勢となることにより、食道裂孔の開大が起こる。これがヘルニアの原因となる。
  • 症状としては食後に増悪する胸やけ、前胸部痛、心窩部痛などがみられる。
  • 食道裂孔ヘルニアには滑脱型、傍食道型、混合型の3つに分類される。滑脱型が大部分を占め、胃食道逆流症(GERD)の要因となる。

診断


  • 上部消化管造影で、胃の一部の縦隔内への脱出を認める。
  • 内視鏡検査で、胃粘膜の食道側への脱出を認める。

治療


  • 無症状の場合:経過観察する。
  • 胃食道逆流症(GERD)に伴う症状がある場合:GERDの治療に準じ、減量、睡眠時の上半身挙上、酸分泌抑制薬(PPI,H2RA)の投与などを行う。
  • 嵌頓を起こしている場合:保存的治療に反応しない場合:外科的治療(腹腔鏡下Nissen術など)を行う。

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