NOD2

NOD2蛋白は単球、マクロファージ、消化管のパネート細胞の細胞質に発現している。リガンドは細菌菌体成分の一部であるmuramyl dipeptide (MDP)で、微生物を認識する細胞内センサーとして働くことが知られているが、生理的な機能については未だ不明な点が多い。1040個のアミノ酸よりなり、N末端より蛋白間相互作用に重要なCARD (caspase recruitment domain)領域、重合化に関係するNOD (nucleotide oligomerization domain)領域、そしてC末端にはToll様受容体(Toll-like receptor, TLR)の細胞外ドメインとして微生物の特徴的なパターン認識にも関与しているLRR (leucine rich repeat) 領域という三つのドメイン構造からなる。

NOD2遺伝子異常

 ブラウ症候群(Blau syndrome : BS)は若年性サルコイドーシスと臨床病型が酷似するものの家族集積性があり、常染色体優性遺伝形式をとる疾患である。2001年にNOD2遺伝子異常(R334W, R334Q, L469F)が報告されている。これらの変異は、いずれもNOD領域に存在し、リガンド非依存性にNF-kB活性を増強させる機能獲得性変異である。以前より若年性サルコイドーシスとBSが同一の疾患か議論されていたが、若年性サルコイドーシス症例でBSにおいて報告されている遺伝子異常(R334W)が認められたのを契機に、本邦での若年性サルコイドーシスと診断された症例のNOD2遺伝子検索を行った結果、10例中9例でアミノ酸変異を伴ったヘテロ接合のミスセンス変異を持つ事が明らかになった。これらの変異は全てNOD領域に存在し、BSで認められた変異と同様に、リガンド非依存性にNF-kB活性を増強させる機能異常も伴っていたため、BSと若年性サルコイドーシスは同一の病因、病態を示す事が明らかになった。  一方、炎症性肉芽腫性腸疾患であるクローン病に関連したNOD2遺伝子変異はLRRドメインに集中しており、若年性サルコイドーシスおよびBS関連NOD2遺伝子変異と異なり、リガンドによる刺激時にNF-kB活性をむしろ減少させる機能損失性変異であることが明らかとなっている。欧米では25−50%のクローン患者はL1007fsinsC, G908R, R702Wのいずれかを持ち、対立遺伝子の両対にこれらの変異があると、クローン病発症率が約20−50倍、片対にあると約2倍高くなる。NOD2変異を持つクローン病患者は回腸主病変型で、若年発症する場合が多い。尚、本邦においてはNOD2変異とクローン病との関係は明らかとなっていない。

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