banti症候群

門脈圧亢進症のうち、肝硬変によらないものは非肝硬変性門脈圧亢進症(Non-cirrhotic portal hypertension, NCPH)である。NCPHのうち、肝外門脈の閉塞を伴わないものには特発性門脈圧亢進症(idiopathic portal hypertension, IPHまたはバンチ(Banti)症候群)、バッド・キアリ(Budd-Chiari)症候群などがある。

IPHは肝内性の門脈圧亢進症であり、肝内門脈の末梢で閉塞・狭窄をきたし門脈圧亢進症に至る症候群で原因不明のものを指す。組織学的に肝内門脈の末梢に潰れ・狭小化・硬化性変化がみられる。

病因としては血栓説、自己免疫説、脾原説などがある。先天性免疫不全症が腹水を主徴とする門脈圧亢進症を呈する場合がある。

消化管出血の発症以前は症状が乏しいが、成長障害をきたしている例が多い。鼻出血等を契機に偶然見いだされた血小板減少・白血球減少・脾腫の精査から診断される例がある。門脈圧亢進の進行とともに食道や胃の静脈瘤が破裂して消化管出血に至る。出血は発熱を契機とする例が目立つ。

 進行して門脈体循環短絡量が増加すると肝肺症候群・肝性脳症などが問題になる。肝肺症候群では労作時呼吸困難、バチ状指、チアノーゼ、座位で悪化する低酸素血症(platypnea, orthodexia)などがみられる。

IPHの診断には画像検査で肝後性・肝前性の門脈圧亢進を除外し、肝内性の既知の原因を除外する。例としてはシトリン欠損症やWilson病・糖原病など代謝異常症、そのほかによる肝硬変症、先天性肝線維症、慢性活動性EBウイルス感染症など血液疾患、原発性硬化性胆管炎、B型慢性肝炎、寄生虫疾患、肉芽腫性肝疾患などがある。肝組織所見で裏付けを得ることが望ましい。

門脈体循環短絡の程度を評価するには経直腸門脈シンチグラフィが有用である。肝肺症候群の評価には酸素飽和度でスクリーニングし、肺血流シンチグラフィを行う。

門脈圧亢進症に伴う消化管出血の治療ないし予防では、薬物療法、内視鏡的治療などがある。一時的止血にバルーンタンポナーデ法がある。小児用食道静脈瘤に対する内視鏡的治療には静脈瘤結紮術と硬化療法がある。胃静脈瘤に対してはバルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術(Balloon-occluded retrograde transvenous obliteration, B-RTO)がしばしば選択される。

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