dermoid cyst(成熟嚢胞性奇形腫)
≪概念≫
dermoid cystは成熟した三胚葉成分から構成される。嚢胞は重曹扁平上皮でできた強靭な嚢胞壁で覆われ、正常卵巣とは明確に区別される。嚢胞の一部は皮脂、毛髪、歯牙、骨、軟骨、神経組織、甲状腺などの組織が結節を作って嚢胞内に突出する。
≪疫学≫
胚細胞腫瘍は卵巣腫瘍の25%を占め、好発年齢は10~20歳である。dermoid cystは胚細胞腫瘍のほとんどを占め、残りは悪性の未分化胚細胞腫である。dermoid cystは良性腫瘍で50歳以上の高齢で悪性転化しやすく、悪性転化した場合は扁平上皮癌が多い。
≪症状≫
腫瘍が発育した後に腹部腫瘤として自覚されるが、十分発育する前に茎捻転の急性腹症をおこすケースもある。
≪検査/診断≫
・腹部X線、腹部CT
嚢胞壁から突出した歯牙や骨などの石灰化組織が白く映し出される。
・腹部超音波検査
嚢胞内は脂肪が豊富であり、全体として高輝度に描出される。毛髪、歯牙、骨などは高輝度のヤシの実状の突出を呈し、Rokitansky結節と呼ばれる。
・MRI
脂肪成分はT1強調画像では高信号、T2強調画像では中等度信号となる。脂肪抑制では黒く抜ける。
・腫瘍マーカー
良性腫瘍だが、CA19-9が上昇する。CA125は正常。
≪治療≫
茎捻転による急性腹症では、緊急手術となる。
患側付属器切除が基本となるが、dermoid cystは正常卵巣との境界が明瞭なので、妊孕性温存する場合は卵巣嚢腫核出術も施行可能である。