てんかん
種々の原因により、大脳皮質細胞の異常興奮をきたし、けいれんなどの発作を反復する病気である。特発性てんかんの発症は幼少時期に多い。
てんかん発作には大きく分けて6種類あるう。
<てんかん発作の分類>
【I】 部分発作…局在する焦点のみが過剰放電して始まる。
① 単純部分発作
意識障害はなく、身体の一部の痙攣がある。脳波の初見としては間欠期に病巣部位にspikeがみられる。第一選択薬はカルバマゼピンを投与する。
② 複雑部分発作
精神活動の停止が起こり、周囲からは覚醒しているように見えるが、本人は発作中の記憶が欠如する。脳波では間欠期に側頭葉を中心に棘徐波(spike&wave complex)が見られる。学童期以降に好発。口をもぐもぐさせたり、徘徊するなどといった自動症が見られるのが特徴である。第一選択薬はカルバマゼピンである。
【II】 全般発作…両側大脳半球が同時に過剰放電して始まる。
① 欠伸発作
複雑部分発作と同様、精神活動の停止が起こり、周囲からは覚醒しているように見えるが、本人は発作中の記憶が欠如する。痙攣はない。脳波では発作時に3Hz棘徐波複合が見られる。過呼吸により誘発される突然の意識消失と数秒後の回復が見られるのが特徴である。小児期の女児に好発である。第一選択薬はバルプロ酸である。
② ミオクローニ発作
意識消失は軽度だが、光刺激により誘発される突然の瞬間的な筋収縮を伴う痙攣があるのが特徴である。脳波では発作時に多徐波複合が見られる。新生児〜小児期に好発である。第一選択薬はバルプロ酸である。
③ 脱力発作
意識消失があるが、痙攣は見られない。突然の瞬間的な脱力が特徴である。そのため、頭部・顔面外傷をきたしやすい。脳波は全般性不規則棘徐波複合、平坦化、低電位速波など多彩な所見を示す。幼児期に好発である。第一選択薬はバルプロ酸である。
④ 強直間代発作
意識消失が見られ、全身性の強直発作が起こったあとに間大発作が生じ、発作後に睡眠に陥るなどして正常に戻る。脳波としては発作時に全般性多棘波、間代発作時に全般性棘徐波複合がみられる。全世代に好発で、第一選択薬はバルプロ酸である。
<その他のてんかん>
① West症候群(点頭てんかん)
乳児期に発症し、頭をこっくりさせるような頸部の前屈発作、上肢の振り上げ動作、四肢及び体幹が屈曲するようなけいれん発作が見られるのが特徴である。これらの症状は数秒〜30秒ほどの間隔で、反復・群発するシリーズ形成が見られる。精神運動発達遅延がみられる。脳波では、発作間欠期にhypsarrhythmiaと呼ばれる棘波と鋭波が無秩序に混在した高振幅徐波がみられる。25〜50%がLennox-Gastaut症候群に移行する。治療としてはバルプロ酸やB6またはACTHの筋注である。
② Lennox-Gastaut症候群
強直発作、否定形欠伸発作、ミオクローニ発作、脱力発作など様々なてんかん発作が見られる。重積発作を起こしやすい。精神発達遅滞を伴う。3〜5歳の幼児期に好発である。脳波では発作間欠期に1〜2.5Hzの全般性遅棘徐波複合がみられる。治療としてはバルプロ酸、クロナゼパムを使用するが、予後不良で難治性である。重積発作が起こった時には、まず気道確保を行い、ジアゼパムを静注する。
③ 側頭葉てんかん
単純部分発作や複雑部分発作を示す。自動症を起こすことが多い。部分発作に続いて全身性のけいれんを生じることがある。治療はカルバマゼピンが第一選択だが、薬剤抵抗性がある場合などの難治例では手術を考慮する。