ジョブ症候群
乳児期早期より皮膚と肺の黄色ブドウ球菌による感染をくり返し,高IgE血症を示す本態不明の症候群である.皮下深部膿瘍,化膿性リンパ節炎,肺炎,肺膿瘍などを起こしやすく,しばしば外科的処置を要する.中耳炎,副鼻腔炎,関節炎,肝膿瘍などもみられる.病巣より黄色ブドウ球菌が分離され,血清中には黄色ブドウ球菌特異IgEが存在するのが本症の特徴である.クリプトコックス髄膜炎*やニューモシスチス・カリニ肺炎*などの日和見感染*も報告されており,細胞性免疫能の低下が示唆される.免疫学的には,高IgE血症,一部の抗原に対する特異IgG抗体の産生不良,サプレッサーT細胞*の数と機能の低下,遅延型皮膚過敏反応の低下,好中球遊走能の低下などがみられる.好中球遊走能低下の原因として,ヒスタミン,血清中インヒビター,免疫複合体の関与などが示唆されている.治療法としては,まだ確立されたものはなく,感染症に対する対症療法が主体となっている.