ムーコル症(接合菌症)

 接合菌による感染症の総称であり、ムコール症と接合菌症は、ほぼ同義語として使われている。
多数の属の菌種が接合菌として一括りに分類されており、原因真菌としては、Rhizopus oryzae、R. microspores、R. stolonifer、Mucor circinelloides、Cunninghamella bertholletiae、Apophysomyces elagans、Saksenaea vasiformis、Absidia corymbifera、Rhizomucor pusillusなどが知られている。

日和見型深在性真菌症の一つであり、重篤な免疫不全の存在下で発症する。危険因子は、長期間の好中球減少、ステロイド投与、リンパ球減少、骨髄移植、コントロール不良の糖尿病などがある。輸血後の鉄過剰に対する除鉄剤であるデフェロキサミンの投与中にも発症しやすい。また、近年は、新規アゾール系薬であるボリコナゾール投与中のブレークスルー感染症としての報告も増えている。
環境中に浮遊する真菌を吸いこむことによる経気道的感染が主な経路と考えられている。また、消化管からの感染経路も推測されている。
最多の病型は、鼻脳型で、副鼻腔から感染が始まり、眼窩や口蓋を巻き込み、脳へと波及する。その他、肺型、皮膚型、消化管型がある。また、極めてまれな病型として、各種病型から続発する播種性接合菌症がある。まれに外傷などに続発する限局性の皮膚型接合菌症を除けば、急性に進行し、最も予後不良な真菌症であり、大多数は致死的転機をたどる。
特徴的な臨床症状に乏しく、また、実用化された血清診断がないため、確定診断には病理組織学的検査・真菌学的検査が必要である。適切な検体を得ることは容易ではなく、診断確定は困難であることが多い。 
治療は化学療法と同時に病巣の切除あるいはデブリドマンを行う。化学療法としては、本邦で使用可能な抗真菌薬のうち、アゾール系抗真菌薬やキャンディン系抗真菌薬は無効であり、AMPH-B(脂質製剤も含む)が第一選択となる。


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