伝染性紅斑
伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19によるウイルス感染症である。顔面の蝶形紅斑と四肢のレース様網状皮疹を特徴とし、幼児・学童に流行する。俗にいう「りんご病」である。
臨床像
- 感冒様の症状がまず出たのち、約1週間後に顔面に特徴的な蝶形紅斑が出現する。その後、1〜2日後に四肢にレース様網状皮疹が出現する。
- 感染経路は経気道的な飛沫感染であるが、ウイルスの排泄が見られるのは発疹が見られる1週間ほど前までなので、紅斑が現れる時点では感染力は無く登園、登校の制限は必要ない。
- 成人の感染例では多くは不顕性に終わり、紅斑が現れないことが多いが、2〜3週間程続く四肢のこわばり感を伴う関節炎症状を呈することがある。
- 健常者では予後良好であるが、溶血性貧血患者や妊婦の感染では重篤となることがある。
診断
- 特徴的な発疹が診断の決め手となる。また、免疫正常者においてはヒトパルボウイルスB19特異的抗体の測定を行い、IgM陽性で現在あるいは最近の感染が示唆される。
治療
- 健常者では通常合併症はなく、予後は比較的良好なので治療は不要である。
合併症
- ヒトパルボウイルスB19は赤血球前駆細胞に感染するため、赤血球の減少がおき、いくつかの合併症を引き起こす。
一過性骨髄無形成発作
- 遺伝性球状赤血球症やサラセミアなどの溶血性貧血の患者にみられ、赤血球の産生が停止するために急激に貧血をきたす。速やかな輸血が必要となる。約1週間程度で赤血球の産生は再開される。
持続性感染
- 免疫不全症や白血病患者などの免疫不全者で慢性の貧血原因となることがある。
胎児水腫
- 妊婦が伝染性紅斑にかかると経胎盤的に胎児に感染することがあり、胎児が重篤な貧血に陥った場合、心不全により胎児水腫をおこし、流産、死産することがある。