加藤周一
加藤周一
かとうしゅういち
医師・思想史家(1919-)
東京都渋谷区生まれ。日比谷中学、旧制一高を経て、東京大学医学部を卒業後、血液内科医として東京大学医学部付属病院に勤務。1945年8月には広島の原爆投下直後から、新型爆弾の骨髄に対する影響を調べるために医師として現地に入った。太平洋戦争の終戦と共に、執筆活動を開始し、1946年には小説家の中村真一郎、詩人の福永武彦と共に「1946文学的考察」を発表した。1951年から日本政府の給付留学生としてフランスのパスツール研究所に留学し、血液学の研究の傍ら、小説・演劇・美術に関する執筆活動を行った。帰国後に「雑種文化論」を著し、文学にとどまらない包括的な文明評論活動を開始した。1960年代には、カナダのブリティッシュコロンビア大学で日本文学史の教授として講義する傍ら、日本の雑誌に連載した「日本文学史序説」は、7カ国語に翻訳され、日本文学研究の国際的な共通の教科書として用いられている。英語・独語・仏語を自由自在に読み書きすることができ、米・英・仏・独・伊・中などの世界数カ国の大学において、日本文学史・美術史の教授を歴任した。1982年からは25年にわたって朝日新聞に「夕陽妄語」という社会評論を連載し、日本国憲法擁護の理論的支柱として知られる。1997年には18世紀の江戸時代の大阪で活動した富永仲基という思想家の人生を扱った戯曲処女作「富永仲基異聞・消えた版本」を著し、その初演が前進座によって上演された。2007年には長年にわたる日本文学・美術・音楽史の研究を要約した「日本文化における時間と空間」を発表した。