化膿性関節炎
化膿性関節炎(pyogenic arthritis)とは、血行性、伝達性(隣接部から)、あるいは開放創からの直接伝播などにより関節内に細菌感染を起こすものである。変形性関節症(OA)や関節リウマチ(RA)などにより、すでに損傷している関節は感染が比較的起こりやすい。また、人工関節置換後に生じる場合、人工関節表面に付着した細菌によりバイオフィルムが形成されるために、好中球や抗菌薬に対する障壁となり治療が困難となる。成人の化膿性関節炎では膝関節の罹患が多く、幼児では大腿骨頚部の急性化膿性骨髄炎からの直接波及による股関節の罹患が多い。症状としては、局所的には関節の疼痛、腫脹、発赤、熱感のほか、発熱や悪寒を生じる。発症直後は軟部組織の腫脹しかないが、時間が経つと、白血球より産生される蛋白質分解酵素が関節軟骨を傷害し始める。さらには、滑膜が増殖するほか、軟骨下骨が侵食され、関節可動域制限や拘縮を生じてくる。
化膿性関節炎の関節液は膿性に混濁しており関節液中の白血球数は著明に増加する(通常50000/mm3以上)。一般に起因菌は、グラム陽性球菌である黄色ブドウ球菌(S.
aureus)が半分以上を占め、連鎖球菌がそれに続く。ただし、抗癌剤や免疫抑制薬などを使用している患者では表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)や緑膿菌(P. aeruginosa)、大腸菌(E. coli)による関節炎も認められる。基本的に関節液の膿を培養し、起因菌を同定できれば診断は確定する。ただし、淋菌性関節炎患者では細菌培養の陽性率が約25%に過ぎないので、これを疑う場合には血液、皮膚病変、子宮頚部または尿道分泌液、尿などといった他の感染源と思われる部位からの培養とGram染色を行うべきである。