口腔内扁平苔癬
表皮基底細胞に対するT細胞性の自己免疫反応が生じるために起こること考えられているが、はっきりとした原因は不明である。降圧剤、血管拡張剤などの服用者に多い。局所的には義歯や金属冠が刺激となることがある。女性にやや多く、50~60歳代に好発する。元来は皮膚の赤紫色の丘疹を特徴とする疾患であるが、口腔粘膜にも組織学的に皮膚の扁平苔癬に似た病変を生じる。皮膚に病変がなく、口腔粘膜にのみられる場合は口腔粘膜扁平苔癬という。口腔粘膜の乳白色の細いレース状の線状白斑が特徴である。白斑は数条のものから網目状に広範囲に広がるもの、時には円形、半円形の輪状を呈する。白斑の原因は角化異常が生じるためで、白斑はやや硬いが、隆起は認められない。粘膜には発赤、潮紅、びらんを認めることもある。軽症では自覚症状はないが、びらん、潰瘍があれば飲食物に対する刺激痛がある。好発部位は頬粘膜(80~90%)、次いで下口唇、舌である。口唇の病変には特徴があり、鮮紅色の紅斑部の上皮が委縮をきたす結果、出血しやすく、黄色の被苔や血痂を形成する。舌背では境界明瞭な多数の白斑を生じ、次第に拡大して舌背全体を覆い、舌乳頭は消失し扁平に盛り上がる。
扁平苔癬の経過は長く、特に口腔粘膜の病変は治癒しにくい。網目状の苔癬は比較的治癒しやすいが、白斑状のものは治癒しにくい。扁平苔癬の悪性化は1~3%といわれるが、この点については問題が多い。
原因不明のため的確な治療法はないが、ビタミンA、C、B12などが使用されている。びらん、潰瘍型にはステロイド軟膏の使用を行われるが、再発しやすい。