第56回MVC定例会

[http://blog.goo.ne.jp/med-venture/e/5606bf0e00db9b153ba39a269efc85f7 第56回MVC定例会] 講義録 2008年3月1日東京

医療と経営について学ぶため、経営コンサルタントで医療事務専門家の大石佳能子氏(株式会社メディヴァ代表取締役、医療法人プラタナス総事務長)を講師にお迎えして、「患者視点の医療変革」をテーマにお話いただきました。

①私は大阪出身で、大阪大学を出て日本生命に就職するまで、ずっと大阪にいました。そこで3年間勤務し、米国のハーバード大学に留学してMBAを取得し、McKinseyという経営コンサルティング会社に入社しました。12年間勤め、パートナーを経て、2000年に独立してメディヴァを設立しました。

②元々、McKinseyでは、Consumer-based Reengineeringという概念を通じて、顧客視点からの経営改善を主業務としていました。ヘルスケア部門の統括責任者をしていましたが、経営戦略の立案と提示だけでなく、缶コーヒーの商品開発までやっていました。顧客の視点でサービスを提供していれば、利益は自然と生まれるものですが、企業が販売者の視点で市場に商品を投入する姿勢が続くと、利益が上がらず、企業倫理が低下し、ひいては様々な不祥事を引き起こすことにもなります。

③10年前に高齢出産をしたとき、それまでほとんど縁のなかった医療機関を利用しました。ベテランの産婦人科の開業医の先生に診て頂いたのですが、そこで受診者として感じたことは、顧客の視点がなく、他の業界における技術革新やサービスがほどんど導入されていないのではないか、ということでした。

④よく言われる病院や診療所で待ち時間が長い、という患者の不満についても、医療者がわが積極的に改善策を取っている例はあまり多くはありません。また私の例で言うと、臨月までは開業医の先生に診ていただき、出産は紹介を受けて病院でしましたが、それまでの診察や採決や超音波のデータは活用されずどうなるのだろう、という素朴な疑問を持ちました。

⑤産後に少し時間が出来たとき、それまでの仕事仲間と一緒に医療業界の勉強をしました。その議論の中で得た結論は、「医療業界っておかしいよね。」というものでした。それは私のような医療の外部の人間だけでなく、医師として医療の中にいる人の中にも同じ意見を言われる方がいました。

⑥医師の方々とお話するうちに、自らの仕事とキャリアに満足していない方が意外に多いということに気付きました。また、医療サービスと、医師のキャリアプランの双方に、モデルといった明確な将来像がないというのも、我々の一致した意見でした。

⑦メディヴァの企業理念は、「患者視点の医療変革」ですが、これは必ずしも患者の希望を全て聞く、というものではありません。よりよい医療サービスを受けたいという患者の希望と、よりよい医療を提供したいという医師の希望を繋ぐところに、私たちの仕事があります。

⑧株式会社メディヴァは、医療コンサルティング会社ですが、単に業務分析の書類を提出して終わり、というサービス提供はしておらず、改善提案後の業務operationの受託までを手掛けています。医療法人プラタナスでは、用賀アーバンクリニックを始めとして、7箇所の医療機関を運営しています。私達の最終目標はマクロなレベルでの医療変革ですが、まずミクロな業務改善から、ということで医療に関わっております。

医療法人プラタナスで、実際に診療所を運営する中で見えてきた、経営改善のヒントや、ITを活用した業務の合理化のノウハウを、株式会社メディヴァを通じてコンサルティングサービスとして提供しています。そこで医療機関の経営改善を行うときには、B/Sの改善という外科的アプローチ、P/Lの改善という内科的アプローチ、理念や人材育成の漢方的アプローチという3つの方法を組み合わせています。

⑩私が個人的に興味を持っているのは、医師の経営リテラシーを高め、マスコミの医療リテラシーを高めるところに、日本に医療水準向上の鍵があるのではないか、という点です。医療機関の経営者となる医師には、必ずしもMBAやMcKinseyで要求される経営知識までは必要ありません。もっと基本的で実践的な知識を提供できる塾のようなものを作ろうかとも考えております。

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