胎便吸引症候群(MAS)

生後(通常48時間以内に)最初に排泄される便は、粘性のある暗緑色であり、胎便とよばれる。正常な胎児の場合、胎内で胎便が排泄されることはあまりないが、成熟した胎児が胎児機能不全(胎児ジストレス)などの低酸素状態になると、迷走神経反射により腸管蠕動運動の亢進と肛門括約筋の時間が起こり、羊水中に胎便を排泄し、羊水が混濁する。その後、体内で低酸素状態のために起こるあえぎ呼吸、または出生直後の第一呼吸により、児が胎便で混濁した羊水を気道内に吸引すると、胎便による肺サーファクタントの不活化や気道の閉塞と炎症が起こり、無気肺と肺気腫が混在した呼吸障害が引き起こされる。これを胎便吸引症候群という。
重症例では、遅延性肺高血圧症(胎児循環遺残症)を合併する。羊水混濁、胎児機能不全が認められる場合、出生時の第一呼吸の開始前に胎便の気管内吸引を行いMASを、予防する。MASの治療には、サーファクタントによる気管内洗浄、人口換気、アシドーシスの補正、酸素投与などがある。羊水混濁は10〜20%の胎児に見られ、このうちMASを発症するのは5%である。MASは低酸素状態に反応する能力が確立した正期産児、IUGR児に起こりやすく、RDSとは異なり早産児には少ない。

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