Dressler症候群
心筋梗塞後症候群ともいわれ、 心筋梗塞発症後2~8週間で発熱、胸痛を伴い発症する心膜炎のことである
心膜炎とともに胸膜炎を引き起こし、胸水貯留を認めることもある。赤沈促進、CRP陽性、γグロブリン値上昇、血清補体価上昇などを認めるが、白血球数は正常あるいは減少し、リンパ球は増加する。
心筋梗塞によって発生した新規抗原に対する自己免疫学的機序により発症すると考えられており、中には心筋梗塞発症後,数カ月経ってから発症することもある。同様の心膜炎は開心術後に発症することもあり,術後2~3週間に明らかな細菌感染症の所見を欠くにもかかわらず,微熱,胸水貯留,心囊液貯留,関節痛,筋肉痛などをきたし,心膜切開術後症候群(post-pericardiotomysyndrome)と呼ばれる。
原因は,ウイルス感染が関与している可能性が強く,輸血などによる感染性単球増加症,サイトメガロウイルス,コクサッキーB群ウイルスなどが原因の外因性免疫疾患の一種と考えられているが,詳細は明らかでない。しかし,本症候群をも含めてドレスラー症候群とする記載もある。さらに外傷や,冠血管形成術,カテーテルアブレーション術,ペースメーカー移植術などの後に同様の心膜炎が発症することも報告されており,これらを総称してpost-cardiac injury syndromeとする記載もある。
薬物治療として,古くからコルヒチン,アスピリンが用いられるが,NSAIDsが有効となることもある。ただし,心筋梗塞後症候群の場合,インドメタシンは心筋梗塞の治癒過程を阻害するため,アスピリンが無効の場合に限って使用するべきとされており、これらの薬剤が無効の場合には,副腎皮質ステロイドが用いられるが,ステロイドもまた心筋梗塞の治癒を阻害する。