Lambert−Eaton症候群
神経筋接合部において神経終末の電位依存性Caイオンチャネル(VGCC)に対する自己抗体が存在するために、アセチルコリンの放出が阻害され、神経筋伝達の障害により筋力低下や易疲労性をきたす自己免疫疾患である。傍腫瘍症候群の一つで、特に肺小細胞癌を有する中高年男性に発症しやすい。重症筋無力症との鑑別が重要である。
重症筋無力症との共通症状として、日内変動がある筋力低下と易疲労性が見られる。この疾患のみの症状としては、四肢筋力低下(下肢近位筋優位)、腱反射の低下などが見られたり、反復運動により一時的に筋力が回復する(その後再び低下する)といった症状が見られる。
この疾患では、神経終末の電位依存性Caイオンチャネル(VGCC)に対する自己抗体が異常に産生されている。このため、神経終末に刺激が伝導されても、抗VGCC抗体により神経終末のVGCCが阻害されるために、Caイオンが細胞内に流入しにくくなる。細胞内Caイオン濃度が十分に上昇せず、Achが分泌されなくなり、筋へ刺激が伝達されなくなってしまう。しかし、高頻度反復刺激を加えると、細胞内からCaイオンが汲み出されないうちに次のわずかなCaイオン流入が起こるため、徐々にCaイオンが蓄積していき、やがて細胞内Caイオン濃度が上昇し、AChが分泌されて、筋へ刺激が伝達される。
誘発筋電図では、低頻度反復刺激でwaning現象、高頻度反復刺激ではwaxing現象がみられる。
治療は、肺小細胞癌などの悪性腫瘍を合併しているかどうかによって異なる。悪性腫瘍を合併している場合は、原疾患の治療が第一である。悪性腫瘍を合併していない場合は、対症的にステロイド、免疫抑制法、3,4−ジアミノピリジン、塩酸グアニジン、抗ChE薬、血漿交換法などを行うが、効果は一時的である。
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