Zollinger-Ellison症候群

≪概念≫
・膵Langerhans島非β細胞腫瘍でガストリン異常分泌を伴う疾患である。
・三徴は①難治性潰瘍、②胃酸分泌亢進、③膵の非β細胞腫瘍

≪疫学≫
・40~50歳に多い。gastrinomaは膵原発が80%であり、その他十二指腸13%、胃1%等にもみられる。また、初発潰瘍部位は十二指腸が最も多い。

≪症状≫
・主要症状は、再発性難治性消化性潰瘍と慢性の水様性下痢である。
・高ガストリン血症により、胃底腺粘膜の肥厚がみられ、胃酸分泌過多を来す。
・球後部潰瘍がしばしばみられ難治性である。
・水様性・脂肪性下痢がしばしばみられる。膵炎の合併はなし。
・20~25%にMEN1型が合併し、高Ca血症をみることがある。
・逆流性食道炎

≪診断≫
(血液)血中ガストリン≧200pg/mL(≧1000pg/mLでほぼ確定)
(胃液検査)胃液分泌量↑、基礎分泌量(BAO)↑、BAO/MAO≧0.6
・BAO(基礎分泌量)・・・15mEq/h以上の時に本症を疑う。
・MAO(胃酸分泌刺激剤投与後の最大酸分泌量)
*血中ガストリン値は、胃酸分泌が低下している萎縮性胃炎などの患者ではZ-E症候群患者よりも高値を呈することがあるので、常に胃酸の分泌状態と合わせて評価する必要がある。
(負荷検査)
・セクレチン検査:セクレチン静注15分後のガストリンが200pg/mL以上増加する。(健常者では低下)
・カルシウム検査Ca負荷時にガストリンが過剰に増加する。
(局在診断)ガストリノーマは多発例、悪性例が多いので局在診断が重要。
・CT、MRI、選択的動脈内セクレチン(あるいはCa)注入試験(SASI,SACIテスト)、オクトレオチドシンチグラフィ(ソマトスタチン受容体シンチグラフィ)
*SASI試験:セクレチンを選択的に膵臓の栄養動脈から動注し、肝静脈から採血してガストリンを測定し、この値が上昇した栄養血管よりガストリノーマの局在部位を推定する。

≪合併症≫副甲状腺腺腫・過形成・下垂体腺腫と合併が多く、MEN1型として家族性に発生する。

≪治療≫
a.内科的療法:ヒスタミンH2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬
・腫瘍が悪性、転移(+)、肝腫大なども見受けられるときはストレプトゾトシンetc.
・somatostatin analogueであるoctreotideによるホルモン療法は種々のラ氏島腫瘍の症状を緩和し、またガストリン産生腫瘍の肝転移巣を縮小させる。
b.外科的治療:原発巣の切除が可能ならば膵腫瘍切除。原発巣が切除不能ならば胃全摘術。

≪予後≫
半数が診断時に既に転移巣を有する悪性腫瘍。11%は転移はないが悪性、18%は良性。

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