人体解剖

人体解剖に関する法律

法律は死体にいかなる処置を加えることを厳に禁じている。勝手に死体を移動したり損傷した場合は刑法にもとずき死体損壊罪として処罰される。以下どのような法律のもとに遺体解剖が可能なのか関係法規を挙げて説明する。

医学部・歯学部の学生は死体解剖を行う有資格者ではないことを理解していただきたい。解剖実習として学生が解剖する場合でも法律上は教授・助教授が解剖するのである。従って学生諸君が教授・助教授の指示を無視して解剖を進めたり指定時間外にこれを行なった場合死体解剖保存法に許された解剖を行なっているとは言い難い。厳格に法を適用すれば学生諸君は死体損壊罪として告発されてもしかたがないのである。

 死体解剖保存法第20条に「解剖を行なうものは礼意を失わないように注意しなければならない」と規定されている。死体にはその背後に深い悲しみに包まれた遺族のあることを忘れてはいけない。礼意を表するとは解剖にあたり真面目に学問的にこれを行なうことである。したがって次のような行為は厳に慎まなければならない。

1. 遺体と一般ゴミを混ずる行為 2. 部外者を解剖実習室に引き入れ見物の対象にすること  3. 実習の模様を部外者に吹聴すること

また遺体解剖を行おうとする者にとって、献体者の団体に対してはあらゆる機会に「礼意」を表すことは当然の義務である。

死体解剖保存法(抜粋)

第一条 この法律は、死体(妊娠四月以上の死胎を含む。以下同じ。)の解剖及び保存並びに死因調査の適正を期することによって公衆衛生の向上を図るとともに、医学(歯学を含む。以下同じ。)の教育又は研究に資することを目的とする。

第二条 死体の解剖をしようとする者は、あらかじめ、解剖をしようとする地の保健所長の許可を受けなければならない。但し、左の各号の一に該当する場合は、この限りでない。

一.死体の解剖に関し相当の学識技能を有する医師、歯科医師その他の者であって、厚生大臣が適当と認定したものが解剖する場合 二.医学に関する大学(大学の学部を含む。以下同じ。)の解剖学、病理学又は法医学の教授又は助教授が解剖する場合 三.第八条の規定により解剖する場合 四.刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第百二十九条(第二百二十二条第1項において準用する場合を含む。)第百六十八条第一項又は第二百二十五条第一項の規定により解剖する場合 五.食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第二十八条第一項又は第二項の規定により解剖する場合 六.検疫法(昭和二十六年法律第二百一号)第十三条第二項の規定により解剖する場合

第九条 死体の解剖は、特に設けた解剖室においてしなければならない。但し、特別の事情がある場合において解剖をしようとする地の保健所長の許可を受けた場合及び第二条第一項第四号に掲げる場合は、この限りでない。

第十条 身体の正常な構造を明らかにするための解剖は医学に関する大学において行うものとする。

第二十条 死体の解剖を行い、又はその全部若しくは一部を保存する者は、死体の取扱に当つては、特に礼意を失わないように注意しなければならない。

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