蛆虫療法

蛆虫療法

Maggot therapy

壊死した皮膚に生きたハエの幼虫(蛆虫)をガーゼとともに固定して行う創傷治療法。マゴット療法またはマゴットセラピーとも呼ばれる。マゴットmaggotとは蛆虫のこと。幼虫が腐敗した部分を食べ、幼虫の唾液に含まれるたんぱく質が微生物を殺す役目を果たし、傷を無菌化状態にすることで、患部の治癒機転を促進する。個人差もあるが、定期的にガーゼを取り換えることで、約2週間で効果があらわれます。麻酔は必要とせず、合併症や禁忌症例も少ない。マゴット療法は糖尿病などで足が壊死する難治性潰瘍において、四肢切断amputationしか治療法のない患者に対する治療法として注目を集めている。

ハエ幼虫(ウジ)が傷治療に有効であることは数千年前から一般に知られていた。実際にはオーストラリアの原住民(Aborigines)は数千年前より創を清浄にするために、この療法を実践していた。また、ビルマの伝統医は傷をウジ、泥と濡れ草で覆い治療し、アメリカ先住民(Mayan Indians)は、動物の血を漬け乾かした布で創を覆うことにより、傷にウジを湧かせて、傷を治療していた。 近代にいたっては、戦争中、ウジムシの涌いた創の方が速く治癒し、結果的にその兵隊は命が助かった事を多くの軍医が目撃した。 ジョンホプキンス大学整形外科のW.バゥア教授は,戦地から帰って実際にウジムシ治療を米国内で広めた最初の医師で、1931年にその良好な治療成績が報告された。 その後、抗生物質と外科治療が進歩した1940年代にいたるまで、ウジムシ治療は何千という医療機関で実践され、良好な結果を得てきた。抗生物質の登場により1940年代にいったんは姿を消したが、1990年代になり抗生物質の多用乱用により抗生物質抵抗性の感染性潰瘍が出現し、糖尿病、動脈硬化症等の潰瘍の原因となる疾患が増加、重症化し、これらの難治性潰瘍治療に難渋することとなり、このウジムシ治療の有効性が再び脚光を浴びた。

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