髄膜腫
【病態】
クモ膜の表層細胞から発生する充実性腫瘤。周囲の組織を圧排しながら、緩徐な発育をたどる。第22番染色体長腕(22q11-12)に位置するNF-2遺伝子の異常が半数以上で認められる。多発性髄膜腫例では、神経線維腫症2型が基礎疾患となる。原則として良性であるが、悪性のものも存在する。
【疫学】
髄膜腫は全脳腫瘍の約33%を占め、最も頻度が高い。中年の女性に多い。
【好発部位】
円蓋部、傍矢状洞部、大脳鎌部に好発し、これらで50%となる。他に、蝶形骨縁、鞍結節部、嗅窩部、テント切痕部、小脳橋角部に発生する。
【症状】
周囲の脳や脳神経、静脈洞などを圧排して発育し、発生部位によって症状が異なる。
傍矢状洞部:Jackson型てんかん、対側片麻痺、高齢初発てんかん、頭蓋内圧亢進症状
円蓋部:巣症状(片麻痺、運動失語)、痙攣
鞍結節部:視力障害、視野狭窄(両側耳半盲)
蝶形骨縁:上眼窩裂症候群(海綿静脈洞侵入によるⅢ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ神経麻痺)、視神経萎縮
嗅窩部:Foster-Kennedy症候群(同側視神経萎縮+対側乳頭浮腫)、嗅覚脱失
小脳橋角部:小脳橋角症候群(Ⅴ~Ⅻ神経麻痺+小脳症状)
小脳テント:テント下の病変では閉塞性水頭症、三叉神経痛、小脳半球障害
テント切痕部では三叉神経痛、頭痛、聴力障害、同名半盲
【検査】
頭部単純Xp:腫瘍の頭蓋骨への浸潤が骨肥厚および破壊像、石灰化像として認められる。
CT:やや高吸収域の境界明瞭な腫瘤陰影が認められる。
MRI:T1 low, T2 high. dural tail sign として硬膜に沿った尾状の増強像が認められる。
造影CT・MRI:血管に富む腫瘍であり、均一に増強される。ring enhancementなし。
脳血管造影:外頸動脈系の造影にてsunburst appearanceが認められる。(特に中硬膜動脈がfeeding arteryとなる)
【治療】
放射線感受性は低く化学療法も無効であるが、境界明瞭であり、手術による全摘が可能となる。術中出血を軽減するために、術前に外頸動脈系のfeeding arteryを塞栓することがある。手術にて取りきれなかったものに関しては定位放射線治療も考慮される。
【予後】
全摘出来れば根治可能可能であるが、亜全摘では5年以内に30%が再発する。