脈絡膜新生血管
CNV;choroidal neovasularization
背景
血管新生は近年の基礎医学において一大トピックの一つであり、特に脈絡膜疾患においてどこまで新生血管と捕らえるか、というのは色々と議論の別れる所であると思うが、古典的には組織学的にブルフ膜を越えての血管性増殖、とするのが一般的であろう。しかし、実際の診療において、異常血管がブルフ膜上に進展しているかどうかの判断は極めて困難であるため、便宜上臨床的には以下のような分類がしばしば用いられる。
造影所見上の分類
FAG検査所見により、大まかに2分される
classic CNV 早期より辺縁明瞭な流入像がみられ、典型的なものでは網目状様描出がみられる。活動的なものでは漏出が旺盛で、時間と共に辺縁は不明瞭となるため、治療時の血管板領域の判定は比較的早期の像をもって行う。典型的にはいわゆる色素上皮を越えて網膜下に進展したCNVとされ、視力予後不良の一因であったが、近年PCVにおける析出性変化(fibrin)も時として類似した造影像を示すためその区別がちょっとした話題となっている
occult CNV 境界不明瞭で、時間とともにじわじわ漏出が増強するような描出像を示すCNV。色素上皮からの漏出像、はCNVがなくても見られることはあるので、網膜下・色素上皮下の出血や脂質性浸出物、近年などではICG、OCTなど周辺の所見をも加えての判断となる。
実際にはCNVは明瞭にこれらに2分されるわけではなく、しばしば両者の入り混じった造影所見がみられることから、近年predominantly classic (classic要素がFAG所見上CNV推定領域の50%以上、の意), minimally classic, occult only、などといった分類が米国のスタディなどを中心に用いられている。ICGも導入された現在、このような分類が意味があるのか、といった意見も多いが、臨床的に視力への影響、という観点からは大きくピントの外れた分類ではない(classic要素が大きいほど一般には短期間で視力予後不良となる可能性は高いと思われる)
組織上の分類
組織学的に色素上皮下の新生血管をtype I、色素上皮を越えて網膜下の新生血管をtype IIとされているGass JDM, 1994。ただ、これも臨床的に組織学的判断は困難であることより、便宜的にはしばしばOCT断層所見により、この分類が適応されるが、厳密にはOCT像で新生血管を鑑別できるわけではないので、注意は要する。同様、上に述べたclassic CNVが、典型例においてはtypeIIに相当することになるので、これらの総合所見より、やはり臨床的、便宜的にこの分類が用いられている。一般にはtypeII CNVの方が視力への直接的影響が大きいため、積極的治療の対象となる。
脈絡膜新生血管を伴う疾患
眼科においては黄斑部に脈絡膜疾患を伴う疾患が視力予後的に重要となる。年齢によって主要疾患は異なるが、以下のような疾患に合併する事が知られている。
高齢者では滲出型加齢黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管症、retinal angiomatous proliferationに合併することが圧倒的に多い。他に、網膜色素線状症、高度近視(変性近視)、炎症性疾患(真菌性眼内炎など)、外傷、遺伝性変性疾患(適宜追加してください)などにも合併する事が知られている。