ポリープ状脈絡膜血管症

PCV : polypoidal choroidal vasculopathy

背景

1980年代よりidiopathic polypoidal choroidal vasculopathy (IPCV), posterior uveal bleeding syndrome, multiple recurrent serosanguineous retinal pigment epithelial detachmentsといった疾患名で現在のPCVを示唆する疾患が報告されていた。IAの導入によりこの疾患はより詳細に研究されるようになり、1997年にYannuzziらは現在のPCV概念を確立する論文を発表した。Yannuzzi et al Arch Ophthalmolその後、従来加齢黄斑変性と思われていたものの中にこの疾患が鑑別診断されるようになり、日本では宇山らが1999年にこの疾患症例をまとめて報告しているUyama et alArch Ophthalmol。PCVはアジアに多く、また米国では黒人に多いとされる。

参考文献;ポリープ状脈絡膜血管症  吉村長久 眼紀55:155-172、2004

診断基準

日眼誌 109巻7号探し中にてpreliminaryな記載です

(検眼鏡的orange noduleの存在)

(ICG造影検査によるpolypの検出)

その他この疾患を示唆する所見

反復性の色素上皮下出血やhemorrhagic PED

IAでのnetwork所見

病態

PCV病巣本体は脈絡膜血管に連続するpolyp病巣及びnetwork血管と考えられるが、これらを脈絡膜の異常血管とする説と、PCV病巣本体がブルフ膜内にあったという組織学的知見より全体像を脈絡膜新生血管とする説がある。polyp病巣から網膜下への出血や滲出性変化、network血管上の色素上皮萎縮などにより視力低下がおこる。PCV病巣にtype II CNVを合併することもあり、この場合さらに視力予後は悪くなる。

所見

診断基準にあるような橙赤色病変やIAでのポリープ像に加えて、活動性のものでは色素上皮下からの出血、色素上皮剥離 (PED),serous detachment,脂質性のexudateなどがみられる。AMD(CNV)に比べると出血量が多い傾向があり、広範囲の網膜下出血や硝子体出血を生じることもある。病巣本体は色素上皮下にあるため、活動性が下がるとこれらの合併所見は改善する事が多い。網膜下に新生血管が進展したり、中心窩下に色素上皮萎縮や瘢痕組織が残ると視力予後不良となる。活動期、網膜下に一見CNV様の析出物を生じる事がある(fibrin)が、fibrinについては瘢痕組織を残さず吸収されることが多い。鑑別診断としては、出血を伴わないものではcentral serous chorioretinopathy (CSCR)、網膜下出血を伴うものではAMDやRAPがあげられる。

診断にはIAが重要であるが、病巣の活動性については網膜下の滲出性変化を評価する上で、FAでの蛍光漏出やOCTが参考になる。また、OCT(OCT-III,SLO-OCT)ではpolyp, double layer sighnなど特徴的な所見がみられる。

病型分類

まだ明らかな病型分類というものはないが、いくつかの特徴的な所見パターンはみうけられる。

位置による分類

disc周辺に存在するもの、黄斑領域に存在するもの、また周辺部に存在するものが報告されている。

特徴的なPCV所見パターン

1)太いfeeder vessleを有するlarge PCV

中央に太い血管をもち、その周囲にpolyp病巣が取り囲む様に複数存在する。活動部位がポリープ間で移動し、場所を変えてPE下出血などを繰り返す。大きいものはtype II 新生血管を合併しやすいという報告もあり、こういうものでは大きな瘢痕病巣を残して視力予後不良となる。

2)network-active polyp-PEDで構成される典型的活動性PCV

networはHRAIIでは後期像でhyper-fluorecsence領域として見える。典型例ではnetworkの辺縁にpolypがありさらにpolypを辺縁に含んでnetworkの反対側にしばしばPEDを生ずる。PEDはIAにおいてもしばしばブロック像となるためポリープ自体は明瞭に造影されないこともあるが、この「顔」をみればまずPCVといってよい。PDTの反応性もしばしば良好で、有効例ではポリープが消失し、PEDが平坦化するが、networkは通常残存する。PDT後にIAでPCVの血管像がみえるようになることもある。

治療

PCV病巣が中心窩にかかる滲出性病巣に対しては、PDTが行われる。extrafoveaのpolyp病巣で網膜下にserous detachment等滲出性変化が及ぶ場合は光凝固術が基本。

PDTは従来FA所見により照射範囲を決定するが、PCVについてはpolypやnetworkが検出されても必ずしもその全てが滲出性の活動性病巣ではないため、その全体を照射範囲として含めることの治療予後への影響について明瞭な結論はでていない。また、PEDはしばしばnetwork/polyp病巣の範囲を越えて広範囲に生じることから、必ずしも色素上皮剥離 (PED)全領域を照射範囲に含める必要はないという考えもある。こういったことから従来のFAを基準とした「全CNV領域の照射」ではなくPCVについてはIAを基準とした照射範囲の決定が適切ではないか、という意見もあり、比較試験が検討されている。

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