抗VEGF療法
眼科領域における抗VEGF療法
近年になって眼科領域の新生血管や血管漏出を伴う病態に対する治療として抗VEGF療法が注目を集めている。現在国内ではMacugen, Lucentisの治験が行われている。MacugenはVEGF165 subtypeに対する特異的な抗体である。一方LucentisはVEGFすべてのサブタイプに対する抗体である。さらに、anti-tumor drugとしてアメリカでFDA認可をうけたAvastinもLucentis同様すべてのVEGF subtypeに効果をもつ薬であり、Lucentisと似たような効果が期待できることと、抗がん剤として製薬されたものを少量利用すれば良いことから安価に使用できるため、現在最も注目されている薬剤である。正式認可はおりていないので、各施設で倫理委員会の承認下治験扱いで使用され始めている。
Avastin ;Bevacizumab
プロトコール例 1mg/μl 硝子体内注入
これらの薬剤、特に全てのVEGFに効くとされるLucentisやAvastinは、生体内における反応もまさに奏効機序どおり明瞭で即効性であるが、VEGFを増強するような病態背景のある時には根治療法とはならず、あくまでも対症療法となる。2006年硝子体学会における報告を簡単にサマリーしておく。(アップデートや追加修正あればお願いします)
1. AMD・PCV (滲出型加齢黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管症)欧米の報告でもわが国においても、AMDのCNVの退縮効果は著明であり、また視力的にも欧米においてもPDTでは得られなかった改善効果がみられている。ただ、欧米のプロトコールは毎月の反復投与が原則であり、治療を中断すると、再発し、視力の低下する傾向がみられる。PDTとの併用プロトコールの確立、治療開始タイミングの検討などが今後の重要な検討項目となると考えられる。国内の報告では、PCV/polypにはあまり効果はないようである。
2. 近視性CNV 近視性のPCVに対する阪大での治療成績は良好で、1000μm未満の小さなものでは治療後0.8以上の良好視力が得られるものもあるとされ、今後良い適応として期待される
3. 増殖性糖尿病性網膜症 新生血管に対し即効性の効果を示すが再発する(再度投与で一時的効果あり)術前に投与して新生血管を退縮させてから硝子体手術を行うと、余分な出血を起こさず術中操作がしやすくなるようであり、術前の補助療法として今後重要な一を占めるようになると思われる。
4. 虹彩ルベオーシス 即効性に効果を示すが再発する。1.25mgの結膜下注射でも効果があり、反復治療をしたい時には結膜下注射という選択もある。
5. 黄斑浮腫 CRVOの浮腫に対して、やはり即効性、しかし一過性の効果が得られる。