歯周疾患

歯周疾患とは、歯周組織に発生する、疾患の総称。う蝕と共に歯科の二大疾患の一つとされる。多くの要因の複合により発生するが、歯垢が主要な原因の一つである疾患が多い。

なお、歯周疾患のうち、歯肉に限局した炎症の疾患を歯肉炎、他の歯周組織にも炎症が広がっている物を歯周炎と呼ぶ。ただし、通常、歯肉炎、歯周炎といった場合、それぞれ、単純性歯肉炎辺縁性歯周炎を指すのが一般的である。

小児期 歯周疾患


健常歯肉

―成人に比べ赤みがかった色調(淡紅色)~毛細血管が豊富なために色調が赤みがかる                    ~上皮下結合組織のコラーゲン繊維網は成人に比べ疎である                    ~歯肉角化層は薄い

―辺縁は丸く厚みがある~歯肉溝の深さは乳歯列期では極めて浅い(3-10歳で0,7~1,7mm 成人では2,0mm)

―遊離歯肉と付着歯肉の境界は明瞭~付着歯肉の幅は発育と共に変化する

―歯根膜繊維は成人に比べ幅が広くなる(X-RAYで幅が広く見える) ―咬合し機能を営むようになると主繊維が著しく発達 ―乳歯および幼弱永久歯のセメント質は薄く石灰化の程度が低い~シャーピー繊維の埋入が少ない ―歯槽骨は石灰化度が低く骨髄腔が大きい(骨梁は疎)

歯肉炎

<局所> 単純性歯肉炎 

ブラッシング不良により発現 叢生や永久歯の萌出期に生じやすい(6番遠心歯肉 1番萌出期;萌出性歯肉炎)

思春期性歯肉炎 

思春期の小児に見られる 男子より女子の方が2-3歳はやく発症する 清潔な口腔に発生。前歯部の歯肉のみに現れやすい。(口蓋に症状は出にくい)

急性壊死性潰瘍性歯肉炎

歯肉の壊死と潰瘍形成。紡錘菌とスピロヘータなどの嫌気性菌の増加を特徴とする 灰白色の偽膜と激しい接触痛 栄養不足の場合ー急性壊死性潰瘍性歯肉口内炎になることもある 口臭が著しく異臭を放つ。全身倦怠感。口腔の痛み。抗生物質の投与を行う 処置が遅れると致死的 

<全身疾患>

―糖尿病;歯肉炎の頻度が高い(易感染性) ―白血病;出血傾向 白血病細胞の浸潤増殖により歯肉増殖 ―心疾患;歯肉がチアノーゼ(暗赤色) 非チアノーゼ性の心疾患では特有の症状を示さない

歯周炎

<局所> 前思春期性歯周炎

(5歳ぐらい)乳歯列期に発症。すべての歯に波及し急速な歯周組織の破壊が起こる。遺伝傾向が見られる。

若年性歯周炎 

11~13歳ごろに発症。女性に多い。(1:4) 特に第1大臼歯部または切歯に限局

<全身> Down症候群

口呼吸と歯列不正により歯周炎を発症しやすい

papillon Lefever症候群

手掌足蹠過角化症を示す。乳歯萌出後、全顎にわたり辺縁性歯周炎が出現 5歳までには全乳歯が脱落または抜去される 永久歯においても同様の傾向が認められる。11歳までには全永久歯が脱落または抜去される 創傷治癒は正常。免疫能が低下

無カタラーゼ症候群

細菌の産生する過酸化水素によって口腔粘膜の潰瘍や深部組織の破壊がおこる。

増殖性歯肉炎

単純性歯肉増殖

口呼吸があると発症しやすい

歯肉繊維腫症

非炎症性の歯肉増殖。 稀な疾患で遺伝性、家族性に発症。上下の全歯肉が著しく増殖 小児期に発症

薬物誘発性歯肉増殖

抗痙攣薬(フェニトイン) 免疫抑制薬(シクロスポリン) 血圧降下剤カルシウム拮抗薬(ニフェジピン)の服用によって併発される。 ブラッシングの清掃不良も関与。

口腔粘膜疾患

巨舌 

先天異常によるものが多い(wiedemann-beckwith症候群、クレチン病)後天的なものに脈管神経症性浮腫 開口、下顎骨の過成長を起こし反対咬合となりやすい

溝状舌 

ビタミンB複合体欠乏、DOWN症、クレチン病でときおり見られる。

舌苔 

食物残渣、微生物が糸状乳頭の角化上皮など。唾液分泌量が少ないと現れやすい。衛生状態の影響を受ける

黒毛舌 

小児ではまれ。抗生物質の長期投与により抵抗性のある桿菌、球菌真菌が増成し糸状乳頭に角質棘が発達する

地図状舌 

原因不明 数日で模様が変化する

苺舌 

猩紅熱、急性熱皮膚粘膜リンパ節症候群(川崎病)などの急性熱性疾患の初期症状として認められる。 舌前方部を中心に茸状乳頭が肥大し苺の様相を示す

口腔粘膜

疱疹性歯肉口内炎 

単純疱疹ウイルス(HSV)の感染 初感染は生後6ヶ月~3歳 ほとんどが不顕性感染であるが急性な疱疹性歯肉口内炎として発症することもある 口唇・舌・歯肉に小水疱が形成される。全身的に高熱、倦怠感、食欲不振、接触痛を認める。 対症療法が中心だが急性症状が強い場合には、抗ウイルス薬(アシクロビル)の投与を行う。 抗生剤・ステロイド剤の投与は禁忌である

帯状疱疹 

水痘ー帯状疱疹ウイルスによる感染 感染後、脊髄神経節または脳神経節に終生潜伏 体調不良時に発症しやすい。

ヘルパンギーナ 

コクサッキーA2、3、4、5、6、10型の感染 軟口蓋、扁桃弓に小水疱が多く認められる。 咽頭痛 嚥下痛を伴う。流行性があり、夏と秋に罹患者が多くなる

手足口病 

別名プール熱 コクサッキーA16型 

麻疹

麻疹ウイルスの感染 発疹期の2-3日前に大臼歯の頬側面相当部付近の頬粘膜に栗状大の白斑がめられる(コプリック斑) コプリック斑は発疹が出現する頃には消失する

カンジダ症 

candida albicansによる 鵞口唇とも呼ばれる 乳カスとの鑑別が必要。 抗菌薬(アンホテリシンB ナイスタチン)の投与が必要

ウイルス・細菌と関連のない症例

ベドナ―アフタ(bednerアフタ)

機械的刺激(哺乳瓶など)により口蓋や歯槽提に小潰瘍を認める。

上皮真珠

生後数ヶ月の乳児の歯肉に認められる半球状で米粒大の光沢のある白色の石灰化沈着物様(真珠)腫瘤 歯胚形成過程で歯提の一部が吸収されずに残ったもの。自然に脱落するため、経過観察が望ましい。 口蓋正中部に現れたものをエプスタイン真珠を呼ばれる。

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